「岩氷雪崩」で甚大被害=TNT火薬1キロトン分のエネルギー―中国との警戒体制必要・ネパール専門家

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 【カトマンズ時事】ネパールと中国を襲った土石流の発生は、氷河が岩石と一体となって崩落する「岩氷雪崩」が起きた結果との見方が強い。その巨大な破壊力は下流の人々やインフラに甚大な被害をもたらした。専門家は、国境を越えた危険な氷河の監視・警戒システムの構築が必要と訴えている。
 中国当局の分析によれば、8月26日にネパール側にある高峰の斜面5200メートル付近の氷河が断裂し、岩を巻き込みながら同1800メートル地点までなだれ落ちた。時速180キロの激流は、山から約22キロ離れたチベット自治区吉隆県の国境検問所に約7分で到達。「住民には避難する時間がほとんどなかった」とした。
 ネパール・トリブバン大のランジャン・ダハル准教授(地質工学)も、発生メカニズムについてほぼ同様の見解を示した。米地質調査所(USGS)は、被災地で氷河崩落や土石流によるマグニチュード(M)5.2規模の揺れを観測。それに基づくと「エネルギーはTNT火薬1キロトン分に匹敵する。この地域で今回の被害をもたらすには十分だ」と指摘する。
 当初、氷河の崩落により川が一時的にせき止められ、それが決壊した結果との推測もあった。しかしダハル氏によれば、下流に到達する速さを考慮するとその可能性は低いという。
 ネパールの下流域には洪水の早期警報システムはあるものの、氷河崩落に起因する土石流や鉄砲水に特化した警報システムはない。そのため衛星による監視や地上でのデータ収集も合わせ、危険な氷河の警戒体制を中国とともに構築する必要がある。ダハル氏は、「(警戒)活動は両国で行うべきであり、どちらか一方だけでは情報が不足する」と強調した。
 また、インドやパキスタン、ブータンも含むヒマラヤ地域で今後同様の災害が起きる可能性があるとも危惧した。
 災害の背景には、温暖化による氷河の急速な融解があるとみられている。ネパールのシャハ首相はSNSで、「(災害は)気候変動によりヒマラヤ地域に住む私たちが直面するリスクが増大していることを示した」と言及。国際社会に対策強化を訴えている。 
〔写真説明〕取材に応じるトリブバン大のランジャン・ダハル准教授=8月31日、カトマンズ