電車は数日ごとの簡単な点検から、車両を分解する大がかりな検査まで、段階的に安全を確かめています。どのような仕組みなのでしょうか。
電車の点検は「4段階」
毎日のように利用する電車ですが、その安全がどのように保たれているのか、意識する機会は少ないかもしれません。マイカーには2年に一度の車検がありますが、電車の検査はそれよりもずっときめ細かく行われています。
鉄道車両の検査は法令に基づいて行われています。車両の種類や使われ方に応じて、日常点検から大がかりな分解検査まで段階的に分かれています。
日本民営鉄道協会のウェブサイトによると、電車を対象にした定期検査は、まず数日ごとの「列車検査(仕業検査)」があります。検査周期の例は3から10日ごとで、車体を分解せず、ブレーキ装置や標識灯、合図装置などの主要部分を外部から点検します。
次が「状態・機能検査」で、「交番検査」「月検査」とも呼ばれます。検査周期の例は、3か月または走行3万kmを超えない期間ごとです。集電装置や主電動機、台車、ブレーキ装置などのカバーを外し、より細かく状態を確かめます。
つまり電車は、私たちが気付かないうちに、数日単位という短いサイクルで繰り返しチェックを受けているのです。さらに、数年ごとに車両を大きく分解する検査も待っています。
8年に一度の「全身バラバラ検査」
さらに踏み込んだ検査が2段階あります。一つが「重要部検査」です。検査周期の例は4年または走行60万kmを超えない期間ごとです。車両を解体し、動力を生み出す装置や走行装置、ブレーキ装置などの重要な装置の主要部分を分解して、細部まで調べます。
そして最も大がかりなのが「全般検査」です。検査周期の例は8年ごとで、パンタグラフや台車、車輪など車両の主要部分を取り外し、総合的に調べる検査です。日本民営鉄道協会は、この全般検査について「自動車の車検に相当するものといえます」と説明しています。
その中身は、まさに“全身の分解手術”に近い作業です。例えば、福岡市地下鉄では、全般検査の際に台車やパンタグラフをクレーンなどで車体から取り外して分解・検査し、1編成あたりおおむね2~3か月かけて作業を行うと公式サイトで伝えています。検査を終えた車両は再び組み立てられ、試運転を繰り返して異常がないことを確認したうえで、営業運転に戻ります。
こうした大規模な検査には、車体を持ち上げるクレーンなどの設備が必要です。そのため鉄道会社は、車両基地や総合車両所と呼ばれる専用の施設で、こうした大規模な検査を行います。
近年は、技術の進歩を背景に検査の周期を見直す動きもあります。JR東海は2024年1月、在来線電車の全般検査と重要部検査について、走行データや機器の信頼性向上などを踏まえて周期を延ばすと発表しました。安全を確かめる仕組みも、車両の進化に合わせて変わりつつあるのです。
数日ごとの軽いチェックから、数年に一度の大手術まで。何段階にも積み重ねられた検査の網の目が、毎日の安全な運行を足元から支えています。