シンガポール軍艦の食卓は “屋台メシ”そのもの!? 専門職までいる多国籍な海軍メシである理由とは

オフィス需要活発化でREIT注目

東京に寄港したシンガポール海軍のフリゲート「ステッドファスト」では、厨房や食堂も公開され、航海中の献立も紹介されていました。いったいどのような料理なのでしょうか。

軍艦の食堂は「海上のホーカー」!?

 シンガポール海軍のフリゲート「ステッドファスト」は、2026年6月から7月にかけてハワイ周辺で行われた環太平洋合同演習「リムパック」に参加した後、日本へ寄港しました。そして、8月21日と22日には、東京・お台場の東京国際クルーズターミナルに停泊し、そこで艦内の一般公開イベントが開催されました。

 このイベントでは飛行甲板やヘリコプター格納庫、艦橋などが公開されたほか、乗員が普段利用している厨房と食堂も見学できました。そこに掲示されていて気になったのが航海中の4日間の献立です。

 異国の海軍の食事はどのようなものなのか確認すると、1日目には、ピータンと塩漬け卵を添えた鶏粥、あんかけ麺のローミー、チキンライス、キャロットケーキといったメニューが並びます。なお、シンガポールで「キャロットケーキ」といえば、一般的な甘い焼き菓子ではありません。大根と米粉から作った生地の「チャイトウクエ」と呼ばれる大根餅を卵などと揚げ焼きした同国の名物料理です。

 2日目は中華風炊き込みご飯のファンチョイ(シンガポールやマレーシアで食べられる蒸しご飯)と肉まん、スパゲティ・ボロネーゼ、ナシ・ビリヤニ、ほぐした鶏肉のホットドッグ。と、中国、インド、マレー、アラブ地域どのアジア文化の交差点らしい多彩なメニューが並びます。

3日目にはツナと卵のサンドイッチやインド系の平たいパンであるプラタ、4日目には炒めビーフン、ナシレマ、ミーゴレンなどが用意されます。4日間通して中華系、マレー系、インド系、さらに洋食まで揃った献立は、さまざまな民族が暮らすシンガポールのクルーの要望に応えられる構成となっています。

 同国には、日本の屋台ほどの規模感で、多数の飲食店が集まった「ホーカーセンター」と呼ばれる屋根付きの施設が各地にあり、地元民だけでなく観光客にも広く利用されています。中華料理やマレー料理、インド料理などを一か所で楽しめる庶民の食堂で、その文化は2020年にユネスコの無形文化遺産にも登録されました。

「ステッドファスト」の食堂は、まさに乗員にとっては海上のホーカーセンターといってもいい施設です。

軍艦の厨房はホーカーよりもスゴい?

 もっとも、艦内の厨房は陸上のホーカーとは条件が大きく異なります。

 掲示された説明によると、ステッドファストでは朝食を午前5時から7時、昼食を11時から13時、夕食を17時から19時、夜食を20時から22時に提供します。約90人分の料理を用意するため、調理担当者は食事時間の最大2時間前から準備を開始し、朝食の仕込みを午前3時から始めることもあるそうです。

 シンガポール海軍には「ネイバル・シェフ(Naval Chef)」と呼ばれる調理の専門職があり、乗員へ必要な栄養を供給するとともに、食事を通じて士気を支えることも任務とされています。

 ステッドファストクラスの艦では、4人ほどの調理チームが最大約100人分を担当し、1日3~4回の食事を用意します。

 しかも、出港前には航海日数と乗員数から必要な食材の量を計算し、限られた冷蔵庫や倉庫へ積み込まなければなりません。航海が予定より延びれば、残っている食材に合わせて献立や提供量を調整する必要もあります。

 厨房では火災を防ぐため直火を使わず、電熱調理器具などを使用します。艦が揺れるなかで熱湯や油、包丁を扱いながら、中華料理からインド料理、洋食まで作り分けるのですから、ある意味では専門料理に特化したホーカーの店よりも大変です。

 一般公開で案内役を務めた乗員は、艦内の料理について「ウチのシェフはホーカーの店よりも美味いですよ」と胸を張りました。では、その料理を実際に食べる方法はあるのでしょうか。乗員に尋ねると、笑いながらこう答えました。

「食べたければ、シンガポール海軍に入りましょう!」と。