最大震度7を観測した熊本地震では、イオンモール熊本(嘉島町)で爆発事故が発生し、店舗従業員7人が死亡した。一時的な再入館を認めたイオン側や、再入館を指示した店舗側の刑事責任が問われる可能性があるが、立件のハードルは高いとみられる。
地震は7月28日午後4時27分に発生。イオンによると、同5時ごろには来店客の避難誘導を完了させ、店舗従業員も避難させた。爆発が起きたのはその約50分後だった。
同社の吉田昭夫社長は7月29日の会見で、「いったん避難した者は館内に戻らないのがルール。(死亡した従業員が)なぜ館内にいたのか認識していない」と説明。ただ、同社はその後、私物の回収やレジ締めなどの要望があり、一時的に再入館を認めていたと明らかにした。従業員2人が亡くなった雑貨店の運営会社「ハビタ」(熊本市)は、避難した従業員に対し、店に戻って売上金を金庫に移すよう指示したという。
経済産業省は8月、事故原因について「LPガスへの引火の可能性が高い」と公表。事故調査委員会を立ち上げ、詳しい原因究明を進めている。
大規模災害時に企業側の刑事上の責任が焦点となった例は過去にもある。2011年の東日本大震災では、東京電力福島第1原発事故を巡り、東電旧経営陣が業務上過失致死傷罪で強制起訴されたが、無罪が確定。地震に伴い、盛岡市の百貨店でガス爆発が起き1人が死亡した事故では、岩手県警が同容疑で百貨店の建物管理担当者らを書類送検したが、嫌疑不十分で不起訴となった。
同罪の成立には、事故が予見できたか、結果を回避できたかの両方の要件を満たす必要がある。今回の事故について、ある捜査関係者は「地震から1時間半後にガス爆発が起きるとは予想できないのでは」と語り、原因究明を注視する考えを示した。
甲南大の園田寿名誉教授(刑法)は、10年前の熊本地震の際はガス爆発が起きなかったことを踏まえ、「地震や爆発そのものについて企業側に責任を問うのは困難だ」と指摘。その上で、「再入館に至った経緯次第では、現場担当者の刑事責任が問われる可能性は否定できない」と語った。