1機300億円のセレブジェットが「米軍の攻撃機」に転生!? 任務は“爆弾・ミサイル使わない攻撃” どういうこと?

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アメリカ空軍は優雅なビジネスジェットを改造した“攻撃機”を20機以上調達する計画です。その背景には広大な西太平洋を舞台とした中国との対立があるようです。

見た目は民間機、しかし側面には不気味な張り出しが…

 アメリカ空軍には、外見だけを見ればビジネスジェットでありながら、「攻撃機」に分類される異色の航空機が存在します。それがEA-37B「コンパスコール」です。

 ベースとなったのは、ガルフストリームG550という大型ビジネスジェットです。優雅なキャビンを備え、企業幹部や政府要人を運ぶために設計された機体が、攻撃機として生まれ変わりました。

 しかし、EA-37Bの「攻撃」は爆弾やミサイルを撃ち込むことではありません。攻撃対象は敵の電磁波の利用です。レーダー波を妨害して探知能力を低下させ、通信を遮断あるいは混乱させ、敵の指揮統制や防空システムが利用する電波環境に干渉します。

 胴体左右には大型の電子戦アンテナを装備し、機首や機体内部にも電子戦関連装備を搭載します。その姿は、民間機の洗練された輪郭と、電子戦機特有の無骨な装備が同居する独特のものです。

C-130ベースの先代機から交替

 現代戦では、航空機や地上部隊がどれほど高性能な兵器を持っていても、センサーと通信網が機能しなければ、その能力を十分に発揮できません。EA-37Bは、まさにその弱点を突く航空機です。

 本機より以前に、この任務を担ってきたのがEC-130H「コンパスコール」でした。C-130輸送機をベースにした同機は、長年にわたって米空軍の電子攻撃を支えてきましたが、機体そのものの老朽化が進んでいました。そこでEA-37Bが後継として開発されたのです。ジェット化された機体は速度性能に優れ、より広範囲をカバーできるため運用効率に優れます。

 米空軍はすでにEA-37Bの導入を進めており、これまで12機を調達決定し、うち5機が配備されています。さらに2027年度予算では3機の追加調達が計上され、2031年までには7機を加える構想が示されています。計画が実現すれば、保有機数は最終的に22機へ拡大する見通しです。

 最近ではアメリカ軍によるイラン爆撃作戦「エピック・フューリー」へ参加するため中東へ派遣されました。イランの電磁波使用を妨害する任務に就いていたと考えられます。

ミサイルや爆弾だけでは勝てない“現代の戦場”

 EA-37Bは1機あたり300億円に達するきわめて高価な航空機です。なぜ、電子攻撃機をここまで増やす必要があるのでしょうか。背景には、中国との軍事的競争があります。

 東シナ海、南シナ海、太平洋では、中国軍が長距離レーダー、地対空ミサイル、戦闘機、艦艇、衛星、無人機などを組み合わせ高度なネットワーク網を形成しています。こうした電磁波の網を突破するには、攻撃機や巡航ミサイルを大量投入するだけでは十分ではありません。敵が「見る」「伝える」「判断する」ための電磁的基盤そのものを揺さぶる必要があります。

 EA-37Bは、ミサイルを発射しないにもかかわらず、航空作戦の成否を左右する攻撃手段です。味方の戦闘機が目標へ接近し、精密誘導兵器が正確に飛翔し、指揮官が戦場を把握する――その一方で、敵の同様の活動を妨害する。その背後には、敵の電波利用を妨げ、味方の電磁環境を確保する電子攻撃機が存在するのです。

 ビジネスジェットを改造した異形の航空機は、現代航空戦の最前線にあります。EA-37Bの増備は、アメリカ空軍が航空戦力の価値について電磁波を制する能力まで含めて高める意図があることを示しています。目に見える爆発を起こさずとも、敵の戦場認識と指揮統制を崩せれば、戦闘の帰趨は大きく変わります。コンパスコールが担うのは、まさにその領域なのです。