兵庫県を拠点とする豪華観光バス「YUI PRIMA」が東京の東急バス下馬営業所へ“移籍”しました。悲願の東京進出を果たしたツアーブランド、これからどう展開されるのでしょうか。
世田谷区の下馬営業所へ移籍した「神姫バス」
兵庫県のバス事業者「神姫バス」が2026年8月26日、豪華観光バス「YUI PRIMA」の東京進出にあたり記者会見とお披露目会を開催しました。ナンバープレートは「神戸」のバスでしたが、付いていたのは「世田谷」ナンバーでした。
YUI PRIMAは神姫バスが展開する高級ツアーブランド「真結(ゆい)」専用の車両。工業デザイナーの水戸岡鋭治さんが手掛けた、わずか18席の特別なバスです。2016年から兵庫県を拠点とするツアーで使われてきましたが、いよいよ東京を拠点としたツアーが始まります。このために神姫バスも東京オフィスを開設しています。
神姫バスの長尾 真社長は、2000年代に薄利多売の格安ツアーばかりで疲弊していたバス業界を変えようと一念発起し、「こだわりの車両、こだわりのコース、料理、宿、そして専門アテンダントによるおもてなし」を揃えたツアーブランドを立ちあげたと振り返ります。JR九州の「ななつ星in九州」などを手掛けた水戸岡鋭治氏と出会い、「もっと勇気出してやろう」と誘われたことが大きな転機となったそうです。
「真結」は関西を中心とした10年間で、会員数は1万2000人にのぼり、利用者の7~8割がリピーターという高い人気を誇ります。その「ゆい」が、次のステージとして選んだのが東京進出、そしてそのパートナーになるのが「東急バス」です。
今回の東京進出にあたり、神姫バスは5台ある専用車のうち1台を東急バスへ移籍させ、東急バスに運行を委託。このため東急バス下馬営業所が所在する「世田谷」ナンバーが付いたというわけです。なお、アテンダントについては神姫バスが東京で採用したスタッフが乗務するといいます。
東急バスの古川 卓社長によると、神姫バスとはかつて高速バス姫路線を共同運行していた縁があるといいます。しかし、「2000年代以降の規制緩和で業界全体が疲弊し、当社は高速バスから一時撤退しました。貸切バスも大幅に減車しており、特に観光バスタイプは7両のみ」になっているといいます。
ただ、「規模は小さいですが、運転手は選りすぐりの20名です。山道を走ってもコップの水がこぼれないような、乗り心地のいい運転を訓練してきています」と自信を見せます。
このほかにも東急グループと神姫バス、そして水戸岡氏の間には浅からぬ縁があります。伊豆急行の豪華クルーズトレイン「THE ROYAL EXPRESS」は水戸岡氏のデザインで、YUI PRIMAとも似通う部分があります。THE ROYAL EXPRESSとYUI PRIMAが連携したツアーも開催済みだとか。
近年では、神姫バスの関連会社が事業展開するサウナバス「サバス」の第2号車に東急バスの車両が提供されるなど、協力関係が続いていました。東急バスとしてはYUI PRIMAの運行を通じ「いろいろ勉強させてもらう立場」だということです。
車両はどんどん増やす!
東京発の「真結」は、2026年9月からスタート。現在のところ宿泊7コース、日帰り2コースの計9コースが設定されます。
その中でも象徴的なのが、「里山十帖のファームダイニング 大地の恵みを探す旅」と題されたツアーです。予約が取りにくいことで知られる新潟県南魚沼市の人気宿「里山十帖」を1日貸し切り、棚田での稲刈り体験や、屋外での特別なディナー「ファームダイニング」を楽しみます。旅行代金は2名1室で22万8000円から。このツアーは東京発(1泊2日)と関西発(2泊3日)の合同企画として開催され、両方の参加者が宿で合流し、特別な晩餐会が開かれる予定です。
来年に創業100周年を迎える神姫バス。長尾社長は東京進出への意気込みをこう語ります。
「富裕層向けツアーは東京にも潤沢にありますが、私たちは企画から運行、アテンダントまで一気通貫で責任を持つ体制で臨みます。儲からないからやめるという選択肢は持っておりません。2台、3台と車両も増やしていきたい」
関西の「厳しいお客様」に揉まれながら続けてきた、という旅のスタイルが、首都圏でどのように受け入れられるのか、注目されます。