卵が焼けそうなほど熱くなる、真夏のアスファルト。石油から作られているのに、なぜドロドロに溶けないのでしょうか。そこには特有の構造と、暑さに負けない硬さの調整という、見えない工夫が隠されていました。
60度を超える灼熱の路面、なぜ溶けてしまわない
夏の日差しに照らされた道路は、近づくだけで熱気が立ちのぼります。環境省の資料でも、熱を吸収しやすい黒いアスファルトの表面温度は60度を超えることがあると示されています。
ここで素朴な疑問が浮かびます。道路の黒い部分には、石油から作られた「アスファルト」が使われています。石油由来でベタベタした素材なのに、なぜ真夏の灼熱の路面でドロドロに溶け出さず、しかも重い大型トラックの重さに耐えられるのでしょうか。
じつは、ふだん「道路のアスファルト」と呼んでいる黒い路面は、アスファルトだけでできているわけではありません。
道路に使われているのは、砂利や砕石といった「骨材」と、つなぎ役のアスファルトを混ぜ合わせた「アスファルト混合物(アスファルト合材)」です。アスファルト合材の業界団体も、アスファルト混合物は砕石・砂・石粉とアスファルトを所定の割合で配合した材料で、骨材などをアスファルトが接着するものだと説明しています。
たとえるなら、たくさんの小石を糖蜜で固めた菓子「おこし」のようなものです。硬い骨材が骨組みとなり、アスファルトがそれらを接着することで、舗装全体として荷重を受け止めているのです。
とはいえ、つなぎ役のアスファルトが夏の暑さでゆるんでしまっては元も子もありません。ここに、もうひとつの仕掛けが隠されています。
カギは「針入度」と「軟化点」 暑さに負けない硬さの調整
アスファルトの硬さは、「針入度(しんにゅうど)」という数値で表されます。一定の条件で標準の針を押し当て、どれだけ深く刺さるかを測る指標で、アスファルトの技術団体である日本アスファルト協会の入門講座によると、針入度が大きいほど軟らかいアスファルトとされています。
道路用には、いくつかの硬さのものが使い分けられています。同協会の規格表では、針入度60〜80は一般地域用や寒冷地用など、40〜60は一般地域用で変形しにくさが求められる場所などの目安として示されています。使う場所の気温や交通の条件に合わせて、硬さを選んでいるわけです。
もうひとつ大切なのが「軟化点(なんかてん)」です。アスファルトは多くの成分が混ざった物質で、氷のように決まった融点を持たず、温まるとだんだん軟らかくなっていきます。そこで、ある決まった条件で軟らかくなる温度を測り、それを軟化点と呼んでいます。
日本アスファルト協会の規格表によると、舗装用石油アスファルトの軟化点は種類によって幅があり、たとえば針入度60〜80では44.0〜52.0度、40〜60では47.0〜55.0度と示されています。「それなら60度の路面で溶けるのでは」と思えますが、この軟化点は、アスファルト単体が一定の条件で軟らかくなる温度を示す指標です。
実際の路面は、骨材などとアスファルトを混ぜて締め固めたアスファルト混合物なので、アスファルトが高温で軟らかくなっても、すぐに路面全体が液体のように流れ出すわけではありません。
とはいえ、夏場に重い車が同じ場所を通り続けると、路面が少しずつ変形して溝のようにへこむ「わだち掘れ」が起きることもあります。こうした変形を抑えるため、重い車の通行が多い道路などでは、ポリマーやゴムなどの改質材を加えた「改質アスファルト」が使われることがあります。改質アスファルトの技術団体である日本改質アスファルト協会も、ポリマー改質アスファルトは道路を丈夫にし、わだち掘れを減らせると説明しています。
何気なく踏みしめている真夏の道路には、骨材の骨組みと、場所に合わせて選ばれたアスファルトの“硬さ”という、見えない工夫が詰まっているのです。