真夏に乗るオープンカーは最高に気持ちいい乗りものと語る経験者。もちろん大変なことも尽きません。過酷な体験談を赤裸々に綴ります。
真夏のオープンカー「過酷な体験」3選
オープンカーが道路をさっそうと駆け抜けていく姿を見て、「なんて気持ちよさそうなんだ」と思ったことのある人はいるでしょうか。筆者(坂上猛禽:ライター)はかつて、英国のロータス「エリーゼ」やケータハム「スーパーセブン」といった、屋根のないクルマを所有していたことがありますが、オープンカーで“風と一体”になって走ることは実に痛快で、サンルーフとは段違いの開放感を楽しめます。
しかし、これらのオープンカーと過ごす生活は、常に心地よいことばかりではありませんでした。とりわけ8月くらいになると思い出すのが、夏場に遭遇したハプニングの数々です。確かに筆者の経験から言えば、オープンカーは真夏でも「晴れていて風のある日」ならば気持ちよく走れますが、時には「こりゃ参った……」と漏らしたくなるような事態に直面したことも。
今回はそんなオープンカーで真夏に苦労した実際のエピソードを紹介しながら、それらを補って余りあるオープンカーの魅力を伝えていきます。
その1:運転手もクルマも熱中症の危機に
オープンカーは走っているときは最高に気持ちいいですが、信号待ちや渋滞で止まっているときは、特に夏場は“地獄”です。
電動ルーフ車や、マツダ「ロードスター」のようにすぐ幌を閉められるモデルならいざ知らず、筆者が乗っていたロータス・エリーゼや、ホンダ「S660」のようなクルマは運転しながら幌を簡単に閉められません。突然渋滞に巻き込まれようものなら、直射日光の直撃や路面からの熱気にさらされ、なす術を失います。
筆者はある真夏の日中に、オープン状態のエリーゼで銀座へ乗り付けたことがあります。ところが、銀座一丁目の交差点で大渋滞に遭遇。エリーゼはリアエンジン車なので、夏場は走らないとすぐに水温が上がってしまいます。
案の定、ふとメーターを見ると水温が100度を超えていました。しかも運の悪いことに、この時はふたつある電動ファンのうち、ひとつが壊れてしまったようでした。ファンは全力で回りましたが風量が足りず、水温も低下する気配がありません。オーバーヒートの危機です。
そこで、筆者はやむなくエアコンをオフにしてヒーターを全開、送風も最大にして様子をうかがいました。これにより水温の上昇は緩やかになったものの、車内は強い温風で灼熱に。さらにエリーゼはシャシーがアルミ製のため、アスファルトからの熱がもろに床面から伝わってきて、車内の灼熱化に追い打ちをかけました。
まさに運転手もクルマも熱中症の危機であり、最後は目眩や頭痛も感じていました。さすがに耐えきれず、交差点を抜けたところで進路を自宅に変えて帰宅しました。
幸い、エリーゼにも筆者にも後遺的な症状は現れなかったものの、あの時ほど「ちょっとマズいぞ」と危機感を抱いたことはありませんでした。それでも筆者は、そんな思い出をエリーゼと築けたのもいい経験だったと思っています。
その2:令和の夏「ゲリラ豪雨」ホントに怖いのは…
オープンカーのもう一つの大敵は、ゲリラ豪雨です。バケツをひっくり返したような雨量と降り方は、夕立などと美しい日本語で雅に表現できるものではありません。一般道を走っている際に、赤信号で雨に当たるというのはよくあるシチュエーションでしょう。
その一方、実はオープン状態でも高速道路ならそこまで濡れることはありません。多少は雨に当たるものの、速度域が高いこともあって、比較的気にする必要がないのです。
とはいえ筆者が乗っていたクルマのうち、ケータハムには実用的なフロントガラスが備わっていませんでした。高速道路で当たる雨粒はとても痛いのですが、“オープンカー・ハイ”な筆者は、それでも気にせずにドライブを楽しんでいました。
むしろこうした状況では、タイヤと路面のあいだに水の膜ができ、タイヤが路面から浮いてしまう「ハイドロプレーニング現象」のほうが恐ろしいものでした。車種にもよりますが、オープンカーにはスポーツタイプをはじめ、車重の軽さを身上とするモデルが多数あります。特に筆者が乗っていたオープンカーは、どれもその最たるもの。雨の高速はいつも恐る恐る走っていました。
もっとも肝が冷えたのは、帰宅ラッシュの中央道下り線でゲリラ豪雨に遭った時でした。周りを走る新しめのSUVはペースを落とさずかっ飛ばしていましたが、そのペースに合わせて走ると、ステアリングから伝わる手応えが完全に消失して「ゾワッ」としました。あれは冷や汗モノです。焦らずに周囲を確認し、安全に減速して事なきを得ました。
オープンカーは割と雨に出くわしがちな乗りものです。家族やパートナーが乗っていたらこれほど気まずい場面もないですが、ひとりでドライブするなら、雨にも負けず、風にも負けず、この瞬間さえも楽しむ気概を持っていた方がオープンカーを楽しめるでしょう。
その3:直射日光の天然「日焼けサロン」
最後は、筆者がケータハムに乗っていた頃に経験した「プチ悲劇」のエピソードです。この日は太陽が昇る前の早朝から、東京の自宅を出てドライブに行きました。
まだ気温も低い早朝時間帯は、真夏のオープンカー乗りのゴールデンタイムです。湿っているものの心地のよい風、コクピットから頭上もすべて見渡せる眺めの良さ、そして走るほどに青くなる空に、日の出の瞬間。これらはすべてオープンカーでしか味わえない、格別の体験です。
だんだんと走るのが楽しくなっていった筆者は、日が昇ったあともオープンのまま湘南・鎌倉の海辺を疾走しました。「さんさんと照らす太陽やきらめく水面、海風を味わわないなんてもったいない」と、気がつけばオープン状態のまま、一日ぶっ通しで走っていたのでした。
しかし、その翌日にプチ悲劇は起こりました。日焼けで全身真っ赤っかになったのです。皮膚は爬虫類のごとく剥け、湯船につかればじりじりと痛みます。日光を遮るものが何もないオープンカーに乗っている以上、日焼けだけは避けられません。日焼け対策を十分にしていないと、このように痛い目を見るかもしれません。
それでも「あの時見た絶景の感動体験」と「日焼けの苦痛」を差し引きすれば、圧倒的に前者のプラスが勝ります。真夏であろうが真冬であろうが、すべては経験。趣味としてのオープンカーは、雨や暑さ、寒さを防ぐ対策さえしていれば、オールシーズンで楽しめるのです。
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ここまで紹介したオープンカーでの真夏のエピソードを、「過酷な体験」だと捉える人もいるかもしれません。それでも筆者はオープンカーのことを、世界で一番痛快な乗りものだと確信しています。走行風が頬や髪をなでていく感覚は、オープンカーでしか味わえない唯一無二の運転体験です。
オープンカーに乗って屋根を開ければ、その先には非日常が待ち受け、毎日走っているあの道ですら、まるで初めて走ったかのように感動できます。老若男女、クルマを楽しむすべての人々に、人生で一度は味わってほしい乗りものです。きっと今まで知らなかった、新しい世界が待っているはずです。