最終手段の想定も!? 海上自衛官が回答「暴風雨を乗り越える護衛艦」の過酷な台風逃れの裏側

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台風接近時、海上自衛隊の艦艇が安全な海域へ避難する「台風避泊」。暴風雨の中での危険な捨錨作業や、大揺れする艦内での意外な食事事情など、現役海上自衛官から聞いた過酷でリアルな艦内の裏側に迫ります。

横須賀からの台風避泊、状況次第では伊豆大島沖まで

 台風が接近したとき、艦艇は必ずしも港にとどまるわけではありません。強風や高波で岸壁に押し付けられたり、係留索が切れたりする危険があるため、状況次第では港の外、それこそ外洋の安全な海域まで移動して台風をやり過ごします。これを「台風避泊(たいふうひはく)」といいます。

 この台風避泊について、夫で海上自衛官のやこさんに、そのような状況時の艦内での過ごし方を聞いてみました。

 横須賀からの台風避泊では、館山沖で投錨したり、相模湾を走り続けたり、はたまた伊豆大島の風下に隠れたりと、そのときの状況に応じた方法が取られます。

 しかし、投錨中でも風があまりにも強くなると「捨錨準備(しゃびょうじゅんび)」の号令がかかることがあります。錨が海底で踏ん張りすぎると艦に危険が及ぶため、最終手段として錨を切り捨てて航行するのです。

 そのためには隊員が錨甲板まで向かわなければなりません。…とはいえ、暴風雨の中をそのまま歩くのは危険なので、艦内から錨甲板までロープを張り、それをライフラインとして体を支えながら進みます。

 鉄帽(ヘルメット)を被っていても、滑りやすい甲板では心許ないという非常に危険な状況下なので、細心の注意を払いながら作業にあたります。

大揺れの自衛艦内、そのとき乗員は?

 避泊中は艦首にものすごい勢いで波がぶつかり、白い波濤が艦橋にまで届くことも。護衛艦をはじめとした比較的大きな艦艇には、基本的に「フィンスタビライザー」という動揺抑制装置が設けられていますが、さすがに台風の揺れまでは打ち消せないので、当然中にいる人も、あっちへ傾いたと思ったら、今度はこっちへ傾きと大忙しだそう。

 やこさんいわく、このときばかりは新人隊員はもちろん、ベテラン隊員も酔い止めのお世話になる人が多いと、話してくれました。

 余談ですが、不思議なことに揺れている艦艇にずっと乗っていると、バランスを取るためにカロリーを消費してしまうのか、いつもの倍食べてしまう隊員も出てくるのだとか。しかし、一方で船酔いで食欲がなくなる人もいるので、荒天中の艦内では食事事情が二極化しやすいそうです。

 他方で、ここまで揺れると寝られるかどうかも気になります。護衛艦の居住区のベッドは、現在でこそ2段ベッドが主流ですが、古い艦になると3段ベッドも。上段には転落防止の柵が付いているとはいえ、やはり台風の揺れではいつもどおりの睡眠は取れない人が多いのだとか。

 台風避泊は、ただ台風から離れるだけではありません。刻々と変わる海の状況に合わせて判断し、危険な作業をこなしながら艦と乗員を守るための大切な任務です。自然の猛威の前では決して油断できない、そんなことを感じさせられるエピソードでした。