防衛省・自衛隊が長期借り入れ!「元・新日本海フェリー」熊本地震が初任務となった巨大船の全貌

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熊本地震の被災者支援として、防衛省はPFI船舶「はくおうII」を八代港へ派遣し、宿泊や入浴の提供を開始しました。今年運用を始めたばかりの同船の成り立ちや、自衛隊の輸送を支えるPFI船舶の役割について詳しく解説します。

被災者のオアシスに! 新たな支援船「はくおうII」が八代港へ到着

 2026年7月28日(火)に発生し、最大震度7を記録した「令和8年熊本地震」。大きな被害を受けた熊本県八代市や氷川町などでは猛暑のなか、多くの被災者が避難所生活を余儀なくされています。

そうした状況を改善するため、防衛省はPFI(民間資金活用)事業船舶の派遣を決め、大型フェリーの「はくおうII」を姫路港(兵庫県)から八代港(熊本県)へと向かわせました。

 8月4日(火)に八代港へ到着した「はくおうII」は船内が開放され、翌5日(水)10時より利用(乗船)が可能です。船内では、大浴場や休憩施設が利用でき、入浴やWi-Fiへの接続が無料で行えます。8月5日時点の受け入れ人数は1日当たり300人で、できる限り多くの人が利用できるよう乗船時間は2時間以内を目安にしてほしいと呼びかけています。

 また、海上自衛隊による飲料水などの生活支援物資輸送も行われており、7月31日(金)には食料・飲料水や生活支援物資を搭載した海上自衛隊のヘリコプター搭載護衛艦「いせ」が天草沖に到着。同艦からは陸上自衛隊のV-22「オスプレイ」1機と海上自衛隊のヘリコプター3機が陸自高遊原分屯地などへ物資を空輸しました。

 このように、被災者支援を目的に「はくおうII」が使われるのは今回が初めてです。というのも、同船は2026年から防衛省のPFI事業船舶として、主に自衛隊の部隊輸送や災害派遣などで使われ始めたばかりだからです。

 そもそも同船は、2025年まで新日本海フェリーの「はまなす」(1万6897総トン)として舞鶴(京都府舞鶴市)―小樽(北海道小樽市)航路で活躍していました。建造ヤードは三菱重工業長崎造船所。2004年7月に姉妹船の「あかしあ」と共にデビューしています。

「はまなす」の全長は224.82m、全幅は26m。世界で初めてハイブリッド型CRP(2重反転プロペラ)ポッド推進システムを採用し、長距離フェリーでは国内最大級の大きさと速度を誇っていました。

 ただ、老朽化やサービス向上を主眼に新日本海フェリーは2020年代以降、後継船の建造を計画します。これに伴い「はまなす」は、2025年10月17日の小樽出港を最後に舞鶴―小樽航路での運航を終了し、JMU(ジャパンマリンユナイテッド)因島事業所で「はくおうII」へと改造されたのです。なお、2025年11月には新造船の「けやき」(1万4300総トン)が舞鶴―小樽航路へ就航しています。

有事や災害に備える「PFI船舶」とは

 防衛省は2026年現在、南西諸島エリアでの有事を見据えて海上輸送能力の大幅な強化を進めています。ひとつは陸上自衛官が主体となって輸送艦艇の運用を行う「自衛隊海上輸送群」、そしてもうひとつが民間船でありながら有事や災害時は自衛隊の部隊輸送などを請け負う「PFI」船舶です。

 両者の役割について防衛省は、「海上輸送群は島嶼部への侵攻阻止に必要な部隊や装備品等の南西地域への迅速かつ継続的な輸送が任務」であり、「PFI船舶は海上輸送群を含む自衛隊自身の輸送力を補完するもの」と説明しています。

 PFI船舶は、2027年までに8隻体制へ拡充することが計画されています。防衛省によると内訳は大型旅客船2隻、中型貨物船2隻、小型貨物船1隻、小型フェリー1隻、コンテナ船2隻。従来は高速フェリーの「はくおう」と「ナッチャンWorld」の2隻体制でしたが、隻数の増加とともに多様な船種で構成された船隊へと姿を変えます。

 2026年に導入されたのは「はくおう」と「ナッチャンWorld」の代替船です。「はまなす」が「はくおうII」として、津軽海峡フェリーの函館―青森航路に就航していた「ブルールミナス」(8828総トン)が「ナッチャンNEO」として、PFI船舶の大型旅客船の枠に加わりました。

「はくおうII」と「ナッチャンNEO」は、従来の2隻に比べて燃料費が半分程度となる見込みで、コスト競争力の向上が図られます。防衛省でも、緊急要請後の出発港を母港に限定せず、各船舶が民間収益事業を行っている近隣港でも可能にするといった運用ルールの見直しを図っていることから、災害派遣に限らず一般の人が乗る機会が出てくるかもしれません。

 ちなみに、2隻の借り上げ契約は2025年3月に結ばれており、契約額は2026年1月から2035年末までの10年間で約305億円。運航・管理に関しては、2025年5月に防衛省が、双日を代表企業として、日本通運やリベラグループなどで構成する特別目的会社(SPC)高速マリン・トランスポート2と契約を結んだことを明らかにしています。

 10年前の2016年4月に発生した熊本地震では先代の「はくおう」が八代港に派遣され、約1か月にわたって、休養施設として宿泊、食事、入浴サービスの提供を行いました。

 残念ながら再び起きてしまった熊本地震ですが、連日の猛暑で熱中症など体調面のリスクが高まっています。新たにPFI船舶となった「はくおうII」で被災者が少しでもリラックスし、体調を整えられるよう願っています。