引退カウントダウンの「ドクターイエロー」空から見ると…? 東京・名古屋で追った雄姿と競演

スマートレジ普及に2つの追い風

ドクターイエローこと923形新幹線電気軌道総合試験車は、JR西日本所属のT5編成が2027年1月にラストランとなります。黄色い新幹線の雄姿を空から捉えました。

最後のT5編成が2027年引退へ

 東海道・山陽新幹線は、旅客を輸送する営業車両のほかに、線路や電気などを検測する923形新幹線電気軌道総合試験車「ドクターイエロー」も走ります。鮮やかな黄色に青帯を巻いた車体は営業車両とは一線を画し、検測運転のためダイヤは非公開で神出鬼没。いまや鉄道ファンだけでなく、テレビで放送されるほど人々に周知されています。

 ドクターイエローの始まりは、1964(昭和39)年の東海道新幹線開業時からです。開業前の実験線で使用されたA編成、B編成試作車のうち、B編成が電気検測車の922形0番台に改造され、新幹線の開業時から信号通信や電気測定を担いました。編成番号は「Test」のTを冠してT1編成とし、以後T2、T3と受け継がれていきます。

 T1編成は信号や電気を担当し、軌道検測車は自走できない客車タイプの921形新幹線軌道検測車を使用しました。牽引はEF66形電気機関車の顔つきに似た911形ディーゼル機関車が行いましたが、軌道と電気関係の検測列車が別々に運行され、営業列車のスピードアップと過密ダイヤの弊害となりました。そこで1974(昭和49)年に電気軌道総合試験車としてT2編成がデビュー。当時の営業列車と同じ210km/hで電気と軌道が検測可能となりました。

 ドクターイエローの愛称の由来は、鮮やかな黄色い車体からです。国鉄時代から試験車や保守関連の車両は、夜間などでの視認性を高めるために黄色にされており、初代のT1編成と921形から黄色が採用されました。

 JRが発足し、東海道新幹線は300系「のぞみ」の誕生でさらなるスピードアップが実施され、営業列車の進化と共に新たな試験車両が必要となり、700系に準じた7両編成の923形が製造されました。2001(平成13)年にJR東海のT4編成、2005(平成17)年にJR西日本のT5編成がデビューし、代々赤みのあった黄色は、レモン色に近い色味に変わっています。923形は運転士と車掌を含む9人が乗り込み、月に4回ほどをルーティンとして東京~新大阪~博多間を検測運転します。

 ドクターイエローは毎月のように東海道・山陽新幹線を走行し、偶然にも見ることができればラッキーです。それは上空での出会いでも同じ。筆者は空撮を生業としているため、撮影といえば空にいることが多いのですが、それでもドクターイエローに出会う機会はそうそうありません。その中で今回は、東京と名古屋で出会ったときのドクターイエローの雄姿を紹介します。

東京と名古屋の空から見たドクターイエロー

 2016年6月8日、東京都心の鉄道が目まぐるしく変化していく過程を空撮用セスナ機で撮影していた際、ふと周囲の上空を確認するため羽田空港方向を見ると、東海道新幹線の大井車両基地で「黄色い物体」が動くのが目に入りました。

 視程が良かったため品川からでも大井基地の状況がよく分かります。「ドクターイエロー」が出区して検測運行へ出るのだと理解しました。大井車両基地から延びる回送線は、品川ふ頭と天王洲アイル付近を通って、田町駅付近で本線に合流します。回送線は工場や高層マンションが林立したなかを突っ切り、モノトーンのビル街と黄色い車体はよく映え、晴天のため鮮やかな色合いはより際立ちます。

 この撮影は東京駅到着まで。せっかくなので、東京駅ホーム屋根から半身を出している姿を真俯瞰で撮影し、無機質な空間に彩りを与えてみました。

 次は名古屋での遭遇です。中日ドラゴンズのナゴヤ球場脇を通過する東海道新幹線を空撮しました。野球ファンの編集から、いまは二軍本拠地となったナゴヤ球場と新幹線を一緒に捉えてほしいとのことで、数々のドラマを生んだ球場の脇を通過する東海道新幹線を捉えようと上空待機しているときでした。

 南の方から黄色い車体が見えました。ドクターイエローの登場です。偶然の出会いに目を丸くし、名古屋の街を行く姿を捉えられました。ナゴヤ球場、近鉄特急、名古屋駅と、東京とはまた異なる景色と黄色い車体が映えます。

 空撮ならではのドクターイエローの視点として、特徴的な屋根にあります。屋根まで黄色いのですが、4号車のみ白色です。4号車は主に軌道検測を行い、車内の装置を一定の温度で保たせるため、太陽熱によって車体温度が上昇しないよう白色にしています。製造当初からではなく、2006(平成18)年に黄色よりも太陽熱を吸収しにくいとのことで、白色に変わりました。

 空撮でも都市によく映えるドクターイエローですが、老朽化のため2025年にT4編成が廃車となり、既報のとおりT5編成も2027年1月にラストランを迎えます。東海道・山陽新幹線は後継車両としてT6編成ではなく、N700S系16両編成に電気と軌道の検測機器を搭載します。検測機器の技術進歩により、営業車両に組み込むことが可能となり、軌道検測は2019年から一部のN700S系に搭載されていました。

 ドクターイエローは専用車両が終了となりますが、検測機器を搭載した営業車両は「N700S Dr.S」のロゴを掲示し、合計4編成が投入されて、2027年1月に検測機器の運用を開始します。JR東海のブランドイメージ(N700S、S-Workなど)である「S」を冠し、車体色は他の車両と同じ、白地に青帯です。空撮の視点では、ロゴが小さくて判断でないので、屋根上のパンタグラフまわりで確認するしかなさそうです。

 N700S Dr.S編成は営業運転に組み込まれる予定で、乗車する列車が新幹線の検測中という新たな偶然の出会いがありそうです。