F-35戦闘機などで知られる米防衛大手ロッキード・マーティン。同社が今、日本企業との関係を大きく変えようとしています。単なるライセンス生産から、より深い協力関係へと踏み出す狙いは何でしょうか。
イージス艦用最新鋭レーダーで協力深化
中国の海洋進出や北朝鮮の軍事力増強など、日本を取り巻く安全保障環境は、日々その厳しさを増してきています。そうしたなか、自衛隊が装備するイージス艦やステルス戦闘機のF-35などの維持整備や運用支援などを通じて、日本の防衛に深く携わっているのがアメリカの大手防衛関連企業であるロッキード・マーティンです。その前身時代を含め、これまで70年以上にわたり日本での活動を行ってきた同社の日本支社長である渡部達郎氏に、今後の事業展開の展望を含め、お話を伺いました。
まずは、日本企業との連携についてです。これまで、FMS(対外有償軍事援助)やライセンス生産を含め、ロッキード・マーティンは日本向けに数多くの防衛装備品を手掛けてきたと渡部氏は説明します。
「弊社は過去約70年間にわたって装備品のご提供、または日本のメーカー様とご協力をさせていただいてきました。少し具体的に申し上げますと、例えば三菱重工様とご協力させていただいているSH-60J/Kなどのヘリコプター、第5世代戦闘機のF-35、地対空ミサイルのPAC-3、艦艇搭載型のミサイル垂直発射装置(VLS)など、色々なプロジェクトを一緒に進めてまいりました。
また、最近では最新鋭の艦載レーダーであるSPY-7について、富士通様とご協力させていただいております。このように、日本の防衛関連企業様とは広くご協力させていただいているところです」
渡部氏が言及したSPY-7とは、ロッキード・マーティンが開発・製造を進める艦載レーダーで、小さな電波送受信モジュールである「サブアレイスイート(SAS)」を複数組み合わせることで、一つの大きなレーダーアンテナを形作るというもの。従来、イージス艦に装備されてきたレーダーであるSPY-1と比べて、探知距離や探知精度などが大幅に向上しています。
日本では、2027年度に1番艦の就役が予定されている海上自衛隊の「イージス・システム搭載艦(ASEV)」への搭載が決定しており、2026年3月には日本向けSPY-7の性能確認試験「ステラー天狗」が成功裏に行われました。SPY-7に関してロッキード・マーティンは2025年に富士通と部品製造に関する覚書を締結し、協業体制を確立しています。これに関して、渡部氏はその意義を次のように説明します。
「SPY-7の重要な構成品の1つであるSAS、そのなかでも重要な電源部分について、富士通様に製造いただくという合意を経て、すでに製造を始めております。従来のSPY-1は完全にFMSのため日本企業の参画がなかったものですから、ここがSPY-7における大きな違いです。今後、さらに日本企業との関わり合いを増やしていくことを検討しています」
「スタートアップ」にも門戸を開く 日本企業との新たな連携の道とは
さらに、渡部氏によると、SPY-7に関する富士通との協業が物語るように、ロッキード・マーティンは日本企業との連携のあり方について、今後新しい方向性を模索していく考えがあるといいます。
「従来は、基本的には日本の企業様に(ロッキード・マーティン製の装備品を)ライセンス生産していただくのが一般的な形でした。ただ、今後はサプライチェーンの強靭化という課題がアメリカの方にもあり、日本でもそうした面で共通の課題があると思います。政府間では『日米防衛産業協力・取得・維持整備定期協議(DICAS)』といったコンセプトもある通り、より日米が緊密に協力し合う土壌ができてきたのではないかと思います。その観点から、ライセンス生産のみならず、共同開発や共同生産など、よりサプライチェーンに一歩踏み込んだ関係を目指していきたいと思います」
また、日本政府が防衛装備移転三原則の運用指針を改定し、日本企業による装備品輸出を後押しする政策を進めています。これを踏まえて、世界規模で事業を展開しているロッキード・マーティンとして、日本企業による挑戦を後押しする考えもあると、渡部氏は話します。
「これからの挑戦になると思うのですが、例えば同志国に対する(装備品の)輸出を一緒に進めていくでありますとか、またはアカデミアの方々との協力を目指すとか、そういった日本発の開発というものについても、今後お話をしていきたいなという風に考えています。
もちろん、(日本企業の海外での足場が)決して足りないとか弱いということではないのですけれども、日本の企業と一緒にやっていくということで、弊社としてお手伝いできれば双方にとってメリットがあるのではないかなという風に考えておりまして、これは日本人としての私の思いでもあります」
加えて、近年日本でも注目が集まるスタートアップ企業による防衛産業への参入についても、ロッキード・マーティンではさまざまな連携を視野に入れていると渡部氏は言います。
「(スタートアップ企業との連携については)とてもオープンです。米国でもそういった取り組みはすでに始めておりますし、これを世界規模でもやっていきたいという思いを持っています。ですので、日本についても同じような考え方で、各企業様との会話を始めておりますし、実際弊社の最高技術責任者(CTO)が数か月前に来日して、色々な企業様とお話もさせていただきました。
そういった形で、従来からのパートナー企業様との関係も極めて重要ですけれども、新しい企業との関係も広げていく、そうしたお話はさせていただきたいという風に思っています」