ロシア版“アマゾン倉庫”をウクライナが攻撃する理由とは? カギは第2次世界大戦にあり!?

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ウクライナが繰り返すロシア国内奥深くへの長距離攻撃。そこには、単なる報復にとどまらない古くて新しい戦争の思想があるのです。

石油精製施設や物流倉庫を狙う、ウクライナの長距離攻撃

 2022年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻は、すでに4年を超える長期戦となっています。ロシアは圧倒的な国力と兵力を持ちながらもウクライナを屈服させることができず、一方のウクライナも占領された領土を軍事力だけで一挙に奪還するには至っていません。戦争は前線での攻防だけでは決着しない、持久戦の様相を深めています。

 そうしたなか、近年ひときわ目立つようになったのが、ウクライナによるロシア領深部への長距離攻撃です。新たに開発されたウクライナ国産の巡航ミサイルや長距離攻撃ドローンなどを用いて、ロシア国内の石油精製施設、燃料貯蔵施設、飛行場、弾薬庫、軍需工場、物流倉庫といった重要拠点を繰り返し攻撃しています。戦場はもはやウクライナだけではなく、ロシアの後方地域、そのさらに奥深くへと拡大しています。

 この攻撃は報復という意義だけではなく、古典的な「戦略爆撃」の思想が現代的な形で蘇っていると見ることができます。戦略爆撃とは、敵軍の部隊を直接撃破するだけではなく、その国が戦争を継続するための基盤そのものを攻撃する思想です。

「戦争を生産するシステム」を破壊する

 第二次世界大戦では、工場、鉄道、発電所、石油関連施設などが主要な攻撃対象となりました。敵の軍隊を前線で一個部隊ずつ破壊するのではなく、その背後にある「戦争を生産するシステム」を破壊する。これが戦略爆撃の基本的な発想です。

 ウクライナがロシア国内の石油精製施設等を攻撃する理由も、まさにここにあります。原油そのものが存在していても、それを精製し、燃料として供給できなければ軍事作戦は維持できません。戦車も装甲車も航空機も艦艇も、燃料なしには動きません。さらに燃料は軍隊だけでなく、物流、農業、産業といった経済活動そのものを支えています。同じことは軍需工場にも当てはまると言えるでしょう。

 つまり、ウクライナの長距離攻撃は、ロシア軍そのものだけを狙っているのではなく、ロシアが戦争を続けるための「国家システム」を少しずつ摩耗させようとしているのです。

 そして、もう一つ見逃せない目的があります。それはロシア社会そのものに戦争の現実を突きつけることです。

 ロシア国内ではウクライナへの侵攻を「特別軍事作戦」と呼称し、戦争ではないという欺瞞のもと、軍事行動を続けています。また、これまで戦争の直接的影響をロシア国民すべてが受けているわけではありませんでした。ロシアでは「戦争はウクライナで起きているものであり、自分の日常とは別の話だ」という感覚が成立する余地があります。国家が巨大な情報統制を敷くなかで、戦争を抽象的な出来事として受け止める人々も少なくありません。

ロシア国民に戦争の現実を突きつける

 だからこそ、ロシア領深部への攻撃には軍事的な意味だけでなく、心理的な意味があります。自宅から遠く離れた前線ではなく、自分たちの生活圏に近い場所で爆発が起きる。空港が閉鎖され、飛行機が飛ばなくなり、石油精製施設が損傷し、ガソリン供給に影響が出る。軍需工場への攻撃によって生産活動が滞る。そうなれば、戦争はもはや「テレビの向こう側の出来事」ではなくなります。

 戦略爆撃の効果は、必ずしも一度の攻撃で劇的に現れるものではありません。むしろ重要なのは、繰り返し攻撃することで相手の経済と社会に慢性的な負担を蓄積させることです。ロシア国内で燃料不足や物流の混乱などが深刻化すれば、「戦争を続けることによって、自分たちの生活が苦しくなっている」という認識が徐々に広がる可能性があります。

 もちろん、これだけでロシアが戦争をやめるとは限りません。歴史を振り返っても、戦略爆撃だけで国家の戦争意思を屈服させることは容易ではありませんでした。しかし戦争を遂行する国家の経済的、心理的、社会的な耐久力を削り続けることには重要な意味があります。

 これまでロシアがウクライナへの長距離攻撃を繰り返してきたように、ウクライナもまたロシアに戦争のコストを負わせようとしているのです。