なぜ震度7の被災地へ戦闘機が出た?「令和8年熊本地震」で即応した自衛隊、夜飛んで“目視チェック”する意味

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2026年7月28日に発生した「令和8年熊本地震」。発災直後に向かったのは戦闘機でした。なぜ災害時に戦闘機が飛ぶのか? 発災から1時間以内で出動できる態勢を24時間維持し続ける、自衛隊の災害初動対応部隊「FAST-Force」とともに説明します。

「FAST-Force」に隠された意味とは?

 2026年7月28日16時27分頃に、熊本県熊本地方を中心に、最大震度7の大地震が発生しました。気象庁によって「令和8年熊本地震」と名付けられたこの地震の規模はマグニチュード7.1(M7.1)。国内で震度7を記録したのは2024年1月1日に発生した能登半島地震以来2年6か月ぶり、熊本県内としては2016年4月14日と16日に発生した「平成28年熊本地震」以来、約10年ぶりとなりました。

 今回の地震では、発災後すぐに陸海空3自衛隊の12個部隊が動きだしており、翌朝からの救出作業に活用できる情報を収集するため出動しています。彼らこそ、自衛隊の災害対応における初動部隊「FAST-Force(ファスト・フォース)」です。

 これは「F=First(発災時の初動において)」「A=Action(迅速に被害情報収集、人命救助及び)」「S=Support(自治体等への支援を)」「T=Troop(実施する部隊)」「Force(力・部隊)」の略で、2013(平成25)年9月から自衛隊内で使われています。

 FAST-Forceの具体的な動きとしては、「震度5弱以上の地震が発生した場合は、速やかに情報収集することができる態勢」「震度5強以上の場合は、航空機による情報収集を行える態勢」の保持が陸海空の共通項目となります。陸上自衛隊では、全国の部隊で約3900名、車両等約100両、航空機約40機が待機しており、発災から1時間以内に出動できるよう、指定部隊の隊員たちは24時間待機しています。

 海上自衛隊は、地方総監所在地ごとに1隻の対応艦艇を指定し、航空機は各基地で約20名の隊員が15分から2時間以内に出動できる態勢を保持しています。

なぜ大規模災害で戦闘機が?

 航空自衛隊は対領空侵犯措置(スクランブル)のため、すべての戦闘機基地で発進命令後5分以内に2機の戦闘機が離陸できる態勢、いわゆる「5分待機」を実施しています。また、このような戦闘機の待機だけでなく、航空救難や緊急輸送のために約10機から20機の航空機(ヘリコプター含む)が待機しています。

 震度5強以上の地震が発生した場合には、これらの航空機を「任務転用」し上空からの情報収集活動を行えるようにしており、その離陸までの所要時間は15分から2時間と決められています。

 実際、最初に動き出したのは航空機で、発災直後に大分県の築城基地や宮崎県の新田原基地などから戦闘機や練習機が飛び立ち、被災地を空から偵察しています。

 海上自衛隊についても、航空機が長崎県の大村航空基地、鹿児島県の鹿屋航空基地などから熊本県の上空へ飛来しています。

 これから暗くなる時間帯でも航空機を飛ばす理由は、暗いからこそわかる情報があるからです。それが「停電」と「火災」です。

 日本の都市部や人家がある地域は、おおむね夜間であっても街灯が煌々(こうこう)と光り輝いていますが、停電になると非常用の電灯や走行しているクルマのライト以外は真っ暗になります。また、火災が発生している場合は、夜間のほうが目立ちます。

 もし、各種航空機が「上空からの偵察結果、異常なし」と報告しても、これは貴重な情報として活用されます。なぜならば、この後送り込む地上部隊の行き先を決めることができるからです。

遠出をするにも制限がつく場合が

 FAST-Forceに指定されている部隊の隊員たちは、自宅か基地(駐屯地)内で待機しています。それぞれの場所で待機している時に災害が発生し、その災害規模が基準に達していれば、24時間いつでも出動できるようにしているのです。そのため、待機部隊の隊員は普段から遠出をすることができず、陸上自衛隊の場合は所属する部隊によって、外出時の行動範囲も定められています。

 陸上自衛隊のFAST-Forceとして、広島県、山口県、岡山県、島根県、鳥取県を担当する第13旅団を例に挙げると、初動対処部隊の先遣部隊という真っ先に出動する部隊が18個あり、計540名の隊員たちが待機しています。

 この部隊は、偵察オートバイや軽装甲機動車、高機動車といった車両で編成されており、発災後、速やかに地上からの情報収集に出動し、主に「倒壊家屋の状況」「道路の通行状況」「火災や水害の発生の有無」「人命救助の有無」などの情報を収集します。

 特に「道路の通行状況」は重要な情報で、もし、道路が陥没していたり、倒壊家屋によって通行できなかったり、橋が崩壊していたりする場合などは、後続の救援部隊本隊の移動経路を変更しなければならないため、必要な場合は迂回路の確認にも向かいます。

 こうして先遣部隊から得られた情報は、速やかに連隊などの司令部に伝達され、その情報は旅団(師団)司令部などに集約されます。また、各自治体からの救援要請も集まってくるので、司令部などでは各情報を基に、それぞれの部隊の規模と派遣先を決定します。

FAST-Forceに欠かせない「当直」って?

 このFAST-Forceを機能させるために重要な役割となってくるのが、「当直」の存在です。ここでいう「当直」とは、勤務時間外において部隊の行動を統括する特別勤務者のことを指します。

 自衛官は「特別職国家公務員」ですので、通常であれば1日7時間45分の勤務時間を基準として、8時15分から17時までを「勤務時間」、それ以外の時間を「勤務時間外」といいます(ただし、駐屯地などの規則によって勤務時間に違いあり)。

 当直にもいくつか種類が存在し、陸上自衛隊の場合は駐屯地を統括する「駐屯地当直司令」、連隊などの部隊を統括する「部隊当直」、中隊などを統括する「中隊当直」などがあり、勤務時間外における発災時の情報収集と人員の管理が主な役割です。この人員の管理にはFAST-Forceも含まれているため、当直の判断によって、必要となればFAST-Forceの隊員たちに呼び出しがかかります。

 当直とは、決して表に出ない地味な存在ですが、部隊が休んでいる時には部隊の目となり耳となり、万が一の災害発生時には駐屯地司令や部隊長などが登庁してくるまでの間、指揮官の代替要員として迅速に対応することが求められる存在として、重要な役割を持っています。

 災害発生時に、その能力を最大限発揮して、様々な役割を果たすFAST-Force。彼らがいるからこそ、自衛隊は迅速な人命救助活動を展開することができるのです。

 迅速な対応には、平素における各自治体や関係機関との緊密な連携も重要になってきます。防衛省・自衛隊は、各地で行われる防災訓練や協議会などを通じて、地域に密着した防災組織の一部として常に備えているのです。