「将来性」担保で融資スタート=クラフトジン、旅館など成長支援―地銀

所得「1億円の壁」問題とは?

 地方銀行の間で、企業の将来性を基に融資する「企業価値担保権」の活用が始まった。不動産や経営者の個人保証に頼らない融資慣行の確立を目指す新制度を利用し、「クラフトジン」を製造する企業や老舗旅館などに融資。新興企業や中小企業への伴走支援を通じ、地域経済の活性化につなげたい考えだ。
 企業価値担保権について定めた事業性融資推進法が5月に施行された。これまでは企業が融資を受ける際には、土地や工場を担保とするか、経営者個人が連帯保証人となる場合が一般的だった。新制度を活用すれば、不動産などの有形資産に乏しい企業でも融資を受けやすくなるメリットがある。
 福島県を地盤とする東邦銀行は、クラフトジン製造を手掛けるKokage(コカゲ、福島県川内村)へ融資した。コカゲは2022年設立の新興企業。東邦銀は県内で採れたカヤの実を蒸留酒製造に活用する技術力を評価したと説明する。
 札幌市に本店を置く北洋銀行は、老舗の旅館業者、能取湖荘(北海道網走市)への融資を実行した。コロナ禍で業績が落ち込んでいた同社に対し、北洋銀は事業再生ファンドを通じた支援を進めていた。業績回復だけでなく、サンゴ草(アッケシソウ)の群生地といった能取湖畔の景観価値も総合的に査定し、企業価値担保権付きの融資で借り換えに応じた。
 静岡県の清水銀行も、木くずを木材チップや製紙原料に再生している小泉チップ工業(静岡市)に対し、運転資金として1000万円を融資した。環境保全への貢献を評価したほか、処理能力の向上が進んでいることから事業拡大の余地があると判断したという。
 ただ、企業価値を正確に判断するためには、地銀の「目利き」力が試されることになる。企業の独自の技術やブランド力、顧客基盤などを含めて事業全体を把握しなければならず、ある地銀首脳は「事実上、融資先を丸抱えすることになる。興味はあるが、もう少し活用事例が蓄積されてほしい」と話す。