田中選手のすね当てに蒔絵=社員と応援、「輪島塗の継承に」―能登地震で被災した漆器の老舗・W杯サッカー

2026年、駆け込み事業承継に注目

 サッカーのワールドカップ(W杯)日本代表、田中碧選手(27)の活躍を社員一丸となって応援する会社がある。能登半島地震で被害を受けた輪島塗の老舗「田谷漆器店」(石川県輪島市)。大会前、すね当てに蒔絵(まきえ)を施し、田中選手に送った。世界の舞台で使ってもらえれば、地元の伝統工芸にも光が当たる。「輪島塗の継承につながってほしい」と期待を寄せる。
 2024年の能登地震では、国の重要無形文化財に指定される輪島塗の工房が大きな被害を受けた。田谷漆器店も市内3カ所の拠点が壊滅状態に。代表の田谷昂大さん(35)はクラウドファンディングで資金を集めるなど立て直しに奔走した。
 復興に取り組む姿を知った田中選手側から「輪島塗の魅力を発信し、支援したい」と、すね当てへの漆塗りを依頼されたのは昨年のことだった。
 その数週間後の昨年7月、田中選手はボランティアで田谷漆器店を訪れ、地震の影響で小学校に一時保管していた皿やわんなどを別の場所に移す活動に協力。約3時間、トラックに積み込む作業などに汗を流した。
 田谷さんは当初、食器など以外に漆を塗ることに抵抗があったという。ただ、田中選手の熱意に動かされ、両足のすね当てに日本サッカー協会のシンボルマーク「八咫烏(やたがらす)」と、「鳳凰(ほうおう)」を蒔絵で描いた。制作期間は約1カ月。4月に田中選手に送った翌月、代表入りが決まった。
 田中選手が今大会初出場した21日のチュニジア戦は、社員約20人とテレビで観戦した。試合後、送ったすね当てをソックスの下に着けていたと知り、「うれしかった」と田谷さん。次戦の活躍にも期待を寄せつつ、「勇気をもらっている。自分たちも復興に向けちゃんとした仕事をしたい」と表情を引き締めた。 
〔写真説明〕蒔絵(まきえ)が施されたすね当てを持つサッカーの田中碧選手(所属事務所提供)
〔写真説明〕取材に応じる輪島塗の老舗「田谷漆器店」代表の田谷昂大さん=16日、金沢市