政府は総額370兆円超の官民投資の試算で、技術の進歩や生産性の向上により中長期的に経済成長率が高まる姿を示した。高市政権は政府支出を民間投資の「呼び水」とし、「強い経済」を実現するシナリオを描く。だが、巨額投資全体に占める政府支出の規模はいまだ示されず、財源の裏付けも不透明。成長シナリオが崩れれば、財政悪化が急速に進むリスクをはらむ。
試算では、政府が通常の歳出に加えて、危機管理・成長投資のための「強く豊かな日本」投資枠などを通じて2027年度に年10兆円を支出すると仮定する。その後、インフレに伴い支出は増え、40年度には年15兆円超まで膨らむと見込む。
民間分を含めた投資効果については、最も高い成長を見込んだ「成長戦略実現ケース(1)」では、実質GDP(国内総生産)成長率が29年度以降拡大を続け、36~40年度は年率1.8~1.9%で推移する。技術や市場の不確実性を織り込んだ「成長実現ケース(2)」でも同期間に1.4~1.5%の成長を見込む。ところが、期待した民間投資を誘発しない「現状投影ケース」では0%台前半にとどまる。
首相は、政策経費を国債に頼らず税収などで賄えているかを示す基礎的財政収支(PB)について、単年度での黒字化にはこだわらず、「数年単位でバランスを確認」すれば良いという考え。代わりに重視するのは、債務残高対GDP比の安定的な引き下げだ。
成長率が加速すれば比率は改善に向かうが、試算では、成長戦略実現ケース(1)以外ではいったん低下した後、40年度にかけて上昇に転換。高成長を維持できなければ財政への信認は保てない。
強く豊かな日本投資枠の財源について、政府は税収増などで賄えなければ国債発行で補う見通し。経済安全保障上、特に重要な分野については、特別会計で複数年度にわたる投資を実行する方針を示す一方、財政不安を抑えるため、将来の安定財源を前提とした一時的な国債(つなぎ国債)の活用を検討する。
だが、明確な償還財源が示せなければ市場からは負担の先送りと受け止められる恐れがある。野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは「政府債務の増加が将来の需要見通しを悪化させ、成長の障害が強まる事態になりかねない」と警鐘を鳴らす。