国家の名誉か、表現の自由か=憲法学者に聞く国旗損壊罪

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 高市早苗首相の重視する「国旗損壊罪」を設ける法案が24日、衆院で審議入りした。国家の象徴として国旗を守るべきなのか。それとも、憲法が保障する「表現の自由」を最大限尊重すべきなのか。憲法学者の間でも見方は割れる。対照的な見解に立つ百地章・日大名誉教授と大石和彦・筑波大教授に考え方を聞いた。
 ◇国旗守る法不在「本末転倒」―百地氏
 百地氏は、国旗損壊罪について「必要な法律で、ごく自然な考え方だ」と賛同。国旗が「国家の象徴、国家の尊厳の象徴」である以上、国として保護の仕組みがあるのは当然と語る。
 理由の一つが、現行法制の不均衡だ。刑法は、外国国旗を侮辱目的で損壊する行為を処罰対象とする一方、日本国旗に関する規定がない。「他国の国旗は守るのに、自国の国旗は守らないというのは本末転倒で、是正が必要だ」と説く。
 器物損壊罪が他人の物にしか適用されず、本人所有の国旗損壊を処罰できない点も理由に挙げる。
 表現の自由は尊重すべきだとしつつ、「国旗を焼くことまで本当に表現の自由と言えるのか」と異議を唱える。国旗は「時の政権」ではなく国家そのものの象徴とし、政府批判の手段として損壊する行為を「筋違いではないか」と疑問視する。
 さらに、今回の法案が処罰対象を「人に著しく不快または嫌悪の情を催させるような方法」での損壊に限定している点を強調。「通常考えて問題がある行為だけを対象にしており、表現の自由を不当に侵害するものではない」と評価する。
 法制定の根拠となる「立法事実」についても「十分に存在している」との見方を示す。実際の被害がなくても、国旗を侮辱的に扱う行為が国民感情などに与え得る影響に着目するのは「法律的に一般的な考え方だ」と指摘。国旗損壊の実例も含め、根拠になると説明する。
 ◇「表現規制なら違憲の疑い」―大石氏
 一方、大石氏は国旗損壊罪に慎重な立場だ。特に「政治的な主張に対して適用される場合は、憲法違反となる可能性が非常に高い」と明言する。
 理由に掲げるのが「表現の自由」だ。数ある権利の中で特に重視しており、「どこまで自由に意見を言え、政府を批判できるかが、次の選挙で有権者が適切な判断をする不可欠の基盤になる」と訴える。
 国旗を燃やす行為などについて、単なる内心の問題とは異なり、一定の規制が認められる余地はあるとしつつ、その多くが政治的な抗議や主張と結び付いていると指摘。一律の法規制によって、本来守られるべき行為まで抑制される恐れがあると懸念する。
 今回の法案が刑罰を伴う点も問題視。「それでも規制が正当だと言うなら、その根拠を国が厳密に示す必要がある」との見解を示す。
 合憲の裏付けとして注目するのが立法事実だ。「単に問題があるという主張だけでは足りない。規制がないためにどういう弊害があるか、国旗損壊がどれほど国民感情に影響しているかなどを、具体的なデータで示す必要がある」と強調する。
 そもそも、戦後の憲法学が立法事実を重視してきたのは「憲法判断が単なる価値観の対立に終わるのを避け、客観的な事実に基づく議論を行うためだ」と説明。今回の法案は立法事実が乏しく、「(提出した)自民党などの価値観の表明にとどまりかねない」と危惧する。 
〔写真説明〕インタビューに答える百地章日大名誉教授=19日、東京都内
〔写真説明〕インタビューに答える大石和彦筑波大教授=12日、東京都内