「4年間自分がやってきたものがある。自分と向き合って大会に挑めている」先発抜擢の田中碧がピッチ示した“プレミア基準”

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 FIFAワールドカップ2026で大躍進を狙っている日本代表。初戦のオランダ代表戦は首尾よく2−2に追いつき、勝ち点1を手にしたが、第2戦のチュニジア代表戦は“鬼門”と位置づけられていた。同日にオランダが一足先にスウェーデンを5−1で下し、勝ち点を4に伸ばして首位に立ったこともあり、この一戦は絶対に落とせなかった。

 オランダ戦で左ひざを負傷した久保建英のシャドー以外は、初戦とほぼ同じスタメンで行くのではないかと見られていた。しかしながら、森保一監督は思い切って4枚を変更。左シャドーに鎌田大地を上げたのに伴い、ボランチに田中碧を抜擢。佐野海舟と組ませるという思い切った采配に打って出たのである。

 第2次森保ジャパンではボランチのサブという位置づけに甘んじてきた田中。今大会開幕直前に前キャプテンの遠藤航が左足首負傷で離脱し、本職のボランチが3枚とより重要度が増していた。ただ、鎌田と佐野のコンビが鉄板化しつつあり、田中が参入するのはなかなか難しいところもあった。指揮官も背番号7をどう組み込むべきかを模索していたはずだ。今回、それを公式戦でトライする好機が巡ってきたのは、ポジティブだったと言っていい。

 その田中は開始早々の3分、いきなり強烈なインパクトを残すことに成功する。右センターバック冨安健洋を起点に右の鎌田、上田綺世とボールが渡った瞬間、ハーフウェーライン手前から一目散に前線へ侵入。ペナルティエリア付近で上田からパスを受け、左の中村敬斗へ展開した。中村がドリブルで仕掛け、マイナスクロスを入れたところに鎌田が飛び出し、先制点が生まれる。田中の迷いのないロングランが待望のゴールを生み出したのは、特筆すべき点だろう。

「下からつなぐという意味では理想的な展開だったし、右から左まで行って最後に中の人数もかけられて点も取れた。自分が飛び出していけば数的優位になりますし、スペースができればプラスワンを作れる。しっかりとチームとして崩せたのはすごくよかったと思います」と背番号7は最高のスタートを切れたのだ。

 その後も最終ラインに下がってビルドアップに関与。攻めの起点を作るなど田中らしい技術の高さを見せつけ、プレミアリーグ仕込みの守備強度の高さを前面に押し出していく。特に鎌田、田中、中村の3人はボールを失った後の即時奪回の意識が際立っており、何度も敵の攻撃の芽を摘んでいた。

「前回W杯との違いは、4年間自分がやってきたものがあること。対戦相手というよりは、自分と向き合って大会に挑めているなと感じています。どの相手だろうが正直関係ないというか『自分ができることにベストを尽くせば、どこでもできる』という自信がある。そこは大きな変化かなと思います」と本人も語っていたが、チュニジア戦で前面に押し出した球際の激しさ、ボール奪取能力などは間違いなくプレミア基準。世界最高峰リーグで試合に出られない時期もあったが、目覚ましい変貌を遂げていたのだ。

 そういった自信と余裕がさらなるチャンスを生み出す。象徴的だったのは、伊東純也の3点目につながった上田への鋭い縦パスだろう。「前半は相手が閉じていたんで、なかなか刺せないと感じながらやってましたけど、『後半は空くかな』と。そのタイミングで綺世がうまく流してくれた。綺世の素晴らしいポストプレーだったなと思います」。同い年の絶対的エースに敬意を表した田中だが、彼がボランチに入ると高精度の縦パスが出るようになるのは事実だ。もちろん鎌田もそういったプレーはできるのだが、田中の方がよりダイナミックに前への推進力をもたらせる。そのストロングと佐野海舟のデュエルの強さ、ボールを持ち上がれる鋭さが融合すれば、鎌田・佐野のコンビとは一味違ったボランチの色合いを出せる。

 4−0という歴史的圧勝の中で、田中自身、そして森保監督が得たものは、想像以上に大きかったように感じられる。「このチームには素晴らしい選手がいて、つねに競争がある。僕自身は前回(のオランダ戦で)ベンチにいましたけど、ベンチにいる選手が競争をなくすようではチームとしてよくない。自分が出た時に何ができるかを示すことが一番大事なんです。少なくとも今回は勝ちに貢献できたと思うし、そこはすごくよかった」と背番号7も安堵感をにじませつつ、スタメンへの布石を打った様子。ここから鎌田、佐野、田中の本職ボランチ3枚をうまく回しながら今大会を乗り切っていけるようになれば、史上最高成績も現実になるのではないか。そんな前向きな感触も少なからずあった。

 田中としては、負傷で出場が断たれた盟友・三笘薫の分まで戦い抜かなければならない。それについて、本人は「頑張ります」と言葉を濁したが、胸の奥底では燃えるものがあるはず。チュニジア戦で浮上のきっかけを得た背番号7が躍進の原動力になってくれれば、リハビリ中の三笘も嬉しいだろう。いいニュースを届けるべく、ここからの本領発揮を期待したい。

取材・文=元川悦子

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