バイクの横に箱が付いた「サイドカー」や、3輪の「トライク」。見た目はバイクの仲間ですが、実は構造によって法律上「クルマ」扱いになり、普通免許が必要だったりヘルメットが不要だったりすることをご存知でしょうか。
バイクに見えて実はバイク以外の扱いにもなる乗り物
映画や昔の戦争映像でおなじみ、バイクの脇に箱のような側車(そくしゃ)をくっつけた「サイドカー」。側車を付けることで運べる人や荷物が増える、個性あふれる見た目の乗りものです。
バイクに車輪がひとつ増えただけなので、法律上「3輪のバイク」として、側車の有無にかかわらず同じように扱われると思う人もいるでしょう。しかし、日本の法律ではサイドカーの扱いは一筋縄ではいきません。構造や車輪の配置によって、サイドカーはバイク扱いになることもあれば、なんと「車」扱いになることもあるのです。
背景には、日本の乗りものを管理する2つの法律の存在があります。ひとつは、車両の登録や車検、税金を定める「道路運送車両法」。もうひとつは、運転免許や交通ルールを定める「道路交通法」です。この2つが同じ車両に対して少しずつ違う対応のため、一貫性のなさから頭が混乱するような“ねじれ”が生じているのです。
では、横に箱がついたようなデザインの一般的なサイドカーは、どう取り扱われるのでしょうか。
タイヤの配置と“傾き”がカギ 免許もヘルメットも変わる
一般的なサイドカー、すなわちバイクの側面に側車を付けただけのものは、道路運送車両法でも道路交通法でも「側車付二輪車」として扱われます。これはバイクの仲間として区分され、運転には排気量に応じた二輪免許が必要で、ヘルメットの着用義務も発生します。
ところが、似たような3輪の乗りものであっても、バイクのような見た目の「トライク」となると話が変わります。一般にトライクとは、左右の車輪の間隔が一定以上あり、車体を傾けずにハンドル操作で曲がる3輪車のことを指します。すなわち一見すると側車を付けただけのようなバイクであっても、側車のタイヤにドライブシャフトなどで動力が伝達されるようになっているものは、トライクに区分されます。
このような構造を持つ乗りものは、最初から3輪車として設計されたものだけでなく、既存のバイクを改造し、そのような双輪駆動にしたものも存在します。
JAF(日本自動車連盟)の解説によると、一般的なトライクは道路運送車両法では、サイドカーと同じ「側車付二輪車」として扱われます。しかし、道路交通法では「普通自動車」に区分されるのです。そのため運転には普通自動車免許が必要で、二輪車に課されるヘルメットの着用義務の対象外とみなされます。
つまり「道路運送車両法上の登録はバイクだけれど、実際の道路交通法による運転ルールはクルマになる」という、法律ごとの役割の違いがはっきり表れた不思議な乗りものとなるのです。
加えて、さらに話を複雑にしているのが、2009年9月の制度見直しです。このとき、一定の条件を満たす3輪車は、道路交通法上、二輪車に準じた扱いを受ける仕組みが整えられました。
対象となるのは、同じ軸にある左右の車輪の接地中心間の距離が460mm未満で、車体や車輪を傾けて旋回する構造を持つモデルで、これらは「特定二輪車」と区分されます。前輪2つが密接して配置されているヤマハの「NIKEN(ナイケン)」などがこれに該当し、車輪の数は3輪でも二輪免許が必要とされ、こちらはヘルメットの着用義務が発生します。
つまり、見た目が似ていても、カーブで車体を傾ける構造かどうか、左右の車輪の間隔が460mm未満かなど、様々な条件によって、免許の種類やヘルメットの要否が変わることになるのです。
「サイドカーはバイクか、それともクルマか」という素朴な疑問の答えは、「車両の登録の制度で見るか、運転免許の制度で見るかで変わる」というのが本当のところでしょう。
サイドカーに限らず、私たちが何気なく見ている3輪の乗りものには、安全を守るための細かな基準と法律による複雑な仕組みが存在しているのです。
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