道の駅こそ、もはや「駅」 鉄道に代わる“知られざる路線網” 地元民が使いこなす高速バス活用術

フィジカルAI 政府が注目の理由

「道の駅」に高速バスの停留所が併設されていることが少なくありません。その多くは観光客向けというより、地元住民がクルマを停めてバスに乗り換える拠点として定着しているようです。

観光客より地元民? 「パーク&ライド」拠点としての道の駅

「道の駅」が人気です。その土地ならではの食や体験を気軽に楽しめる点が理由のようです。その道の駅に高速バスの停留所が設置されているのも少なくありません。道の駅を目的地として、高速バスで旅する人が増えているのでしょうか。

 高速バス停留所が併設されている道の駅は、首都圏だけでも、道の駅「発酵の里こうざき」「富楽里(ふらり)とみやま」「とみうら枇杷倶楽部」「ちくら潮騒王国」(以上、千葉県)、「ららん藤岡」(群馬県)、「ひたちおおた」、「かさま」(茨城県)などが挙げられます。いずれも、東京都内から高速バスが頻繁に発着します。

 例えば「富楽里とみやま」は、フードコートや生産者直売コーナーに、海鮮丼や名産の枇杷、近隣の牧場の牛乳などが並ぶ人気の施設です。週末には、開店を待つ人の列ができるほどです。一般道から利用できる駐車場に加え、富津館山道から直接出入りできる駐車場も備え、「ハイウェイオアシス」を構成しています。

 その高速道路側の駐車場の一角に停留所が設けられています。東京駅、バスタ新宿、横浜駅、千葉駅から、合わせて毎時3~4本の高速バスが到着します。所要時間は1時間半ほどです。

 しかし、高速バスからの降車客は、道の駅の施設にはあまり立ち寄らないようです。降車客の多くは、階段を降りて一般道用の駐車場に向かいます。地元の人が、駐車場内の高速バス利用者専用の区画に自家用車を停めて、東京、横浜へ出かけているのです。週末の朝なら、都内から帰省してきた人を、親族がクルマで迎えに来る姿もあります。

 観光需要の大きそうな土曜の朝から昼ごろに見てみると、近くの富山(とみさん)に登るハイキング客以外に観光客の乗降はなく、むしろ、高速バスと自家用車の乗り換え拠点として、地元の人に定着しているようです。他の施設も同様の傾向です。

乗務員も「乗り継ぎ」 一般道に下りてもコストゼロ!?

 パーク&ライドを、より意識して整備された道の駅もあります。「越前たけふ」(福井県)は、国道8号バイパスの脇に立地しています。特徴的なのは、北陸自動車道の武生ICに隣接するとともに、2024年に開業した北陸新幹線の越前たけふ駅に併設されている点です。

 昨今、地方都市はクルマ社会となり、商業施設や公共施設は、鉄道駅前や旧来の中心市街地よりも、郊外のバイパス沿いに集積しています。「越前たけふ」は、バイパス、高速道路、新幹線という新しい交通の3点セットが交わる地に整備されたのです。

 道の駅に隣接して、パーク&ライド用の駐車場を市が用意しています。地元の人が遠出する際、この立地なら、信号の少ないバイパスでアクセスできて便利です。特に名古屋へは、高速バスが60~90分間隔で道の駅に乗り入れるので、往路は新幹線、復路は高速バスと組み合わせて利用することも可能です。

 道の駅「もっくる新城」(愛知県)も、新東名の新城ICの目の前に立地し、名古屋行き高速バス利用者向け駐車場が併設されています。奥三河にある新城から名古屋へは、県内とはいえ鉄道だと遠回りです。高速バスなら1時間強で地下鉄藤が丘駅に着くため、若者が名古屋に進学しても自宅から通えると好評です。しかし、ここを通る高速バスはそれだけではありません。

 首都圏と京阪神を結ぶジェイアールバス関東/西日本ジェイアールバスの昼行便「昼特急」、夜行便「ドリーム号」シリーズが多数、道の駅に乗り入れます。夜行便では途中休憩という扱いで、昼行便では休憩に加え、停留所として乗降することも可能です。

 実は、道の駅に隣接してJRバス関東の営業所があり、道の駅が関東/西日本の乗務員の乗り継ぎ場所になっています。両社は、高速バスの「管理の受委託」制度を活用し、遠方部分の運行を互いに委託し合うことで、運行の効率化を図っているのです。

 また新城ICは、高速道路外の休憩施設等への「一時退出」社会実験の対象となっています。ETC2.0を搭載していれば、料金所を一度出ても、高速道路料金は通算して計算されます。バス事業者は追加コストを負担することなく、上手に乗り継ぎ運行を行っています。

「道の駅乗り継ぎ」前提でダイヤを組む!

 道の駅で乗り継ぐのは乗務員だけではありません。兵庫県北部の但馬地方を拠点とする全但バスは、城崎温泉・豊岡地区と浜坂・湯村温泉地区から、大阪と神戸へ高速バスを運行しています。2つの地区から2つの都市へ運行しているため、地図で示すと「X」字状になりますが、このうち浜坂・湯村温泉と神戸の区間のみ、直行便がありません。

 そこで、城崎温泉・豊岡~神戸線と、浜坂・湯村温泉~大阪線を、休憩場所である道の駅「あおがき」(兵庫県)で相互に乗り換えできるようにしています。

 高速バスどうしの乗り継ぎと言えば九州道の基山PA(佐賀県)が有名ですが、こちらは、あくまで別々に運行される高速バス路線を乗り継ぐものです。しかし全但バスの例は、自社便どうし、乗り継ぎを前提にダイヤを設定し、運賃も通しで計算されます。片方の便が遅延した際は、無線などで連絡を取り合い休憩時間を調整するそうです。

 限られたリソースで、自社エリア内に広くサービスを提供する工夫と言えます。地元客の利用が目立ちますが、浜坂は、夏場の海水浴、冬のカニで関西では有名ですから、観光需要も期待できます。

鉄道のない島では「駅」そのものに

 周囲の観光の拠点として活用される例もあります。

 道の駅「福良」(兵庫県)は、淡路島の南端、福良港内にあります。大鳴門橋開通まで、四国へのフェリーが頻発していた港で、現在は、鳴門海峡の渦潮観潮船の拠点です。徒歩圏内には、国際ブランドのホテルや、鯛料理を自慢とする温泉旅館が並び、近隣のリゾートホテルも道の駅まで送迎を行います。

 もちろん、地元の人がビジネスや買い物で神戸へ出かける際も、道の駅が便利です。高速バスで1時間半ほど。毎時1~2本走ります。淡路島は、島としては人口規模が大きいものの鉄道がありません。本土なら鉄道駅が果たす役割を、道の駅が担っていると言えそうです。

 こうして見てみると、高速バスと道の駅の関係性は、道の駅の立地によって変わるようです。

 多くの道の駅は、バイパス沿いや高速道路IC近くに立地します。そのため都市部から高速バスで到着すると、二次交通(幹線交通を降りた後の、現地での移動手段)が限られます。かといって、大型テーマパークやアウトレットモールのように一日過ごせるほどの規模はありません。そのため、高速バスが観光客を送り込む、というわけにはいかないようです。

 しかしその立地は、逆に言えば地元の人にとっては自家用車でアクセスしやすく、都市部へ出かける際に高速バスに乗り継ぐ拠点としてはぴったりです。一方で「福良」のように観光のハブになる立地なら、都市部や海外からの観光客受け入れにも寄与できます。

 それぞれの道の駅の性格を理解すれば、高速バスと道の駅は、互いに協力してもっと地域に貢献することができそうです。