高架下に“歴史と情報”がギッシリ! マニアックな展示も楽しめる「地下鉄博物館」、記念の年に向けた“次の一手”は?

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東京メトロ東西線葛西駅の高架下にある地下鉄博物館が、2026年7月に開館40周年を迎えます。日本初の地下鉄専門ミュージアムとして誕生した同館は、限られたスペースながら充実した展示で、現在も多くの人々を魅了しています。

東京メトロの関連財団が運営

 東京メトロ東西線葛西駅(東京都江戸川区)の高架下にある地下鉄博物館が、2026年7月に開館40周年を迎えます。これを祝して7月7日から8月30日まで、開館40周年記念イベント「ちかはく・メモリアル40」として、貸切列車の運行、トークショーの開催、トレインカードの配布など、様々なイベントが行われます。

 同館を運営するのは公益財団法人メトロ文化財団です。文化財団は東京メトロの関連組織として、メトロコンサートなど文化行事を開催する「交通文化事業」、マナーポスターなどを制作する「交通マナー事業」、そして「地下鉄博物館事業」を行っています。駅や車内でマナーポスターやイベント告知ポスターを見たことがある人も多いでしょう。

 文化財団の前身である財団法人地下鉄互助会は、1956(昭和31)年に設立されました。帝都高速度交通営団(営団地下鉄)の職員や退職者の共済機関としての役割に加え、駅構内の売店や広告取次、コインロッカー運営、清掃業務など、現在は子会社が管轄する業務も行っていました。

 その後、地下鉄トラベルサービス(現・メトロコマース)、地下鉄ビルデイング(現・東京メトロ都市開発)などの営利事業を行う子会社が設立されたことで、互助会は当初の目的である公益事業の充実、拡大を図っていきます(2003年に「財団法人メトロ文化財団」に改称、2012年に公益財団法人化)。

 その中核に位置付けられたのが、1987(昭和62)年の地下鉄開通60周年を見据えた地下鉄博物館の建設構想です。1980(昭和55)年に営団が博物館の建設を決定すると、互助会は1984(昭和59)年に「地下鉄博物館建設準備委員会」を発足させ、「地下鉄博物館建設基本計画」をまとめます。

 1985(昭和60)年2月に着工すると、翌年6月末に完成し、7月12日に開館しました。鉄道関係の博物館は当時、最も歴史がある万世橋の交通博物館(東京都千代田区、2006年閉館。後継は大宮の鉄道博物館)があり、1982(昭和57)年に東急電鉄の「電車とバスの博物館」(川崎市宮前区)がオープンしていましたが、地下鉄の博物館は日本初であり、注目を集めました。

 初年度は9か月で約21万の来館者があり、現在も年間約15万人が訪れています。なお地下鉄博物館は、博物館法に基づく正式な博物館です。

 高架下の限られたスペースながら、展示物は充実しています。引退後、交通博物館に寄贈された東京地下鉄道1000形「1001号車」は、開業した1927(昭和2)年の姿に復原されて「里帰り」しました。車両の足元には打子式ATS、車両横には開業時の上野駅ホームが再現され、地下鉄開通50周年事業で作られたターンスタイル式自動改札機のレプリカも設置されています。

 また、営団のもう一つのルーツである東京高速鉄道の100形(129号車)車両は、3分の1にカットされてはいますが、開業時(1938年)の姿に復原されています。運転席でマスコン、ブレーキを操作すると、横に展示された台車の車輪が回転する仕掛けもあります。

一見地味ながら「貴重」な展示も

 運転体験といえば、博物館のために新造された千代田線「6000系」の運転シミュレータです。運転席の前方映像、走行音、各種機器はもちろん、実車の加速・ブレーキ性能、勾配等の線路条件、信号条件が完全再現された本格仕様です。

 1993(平成5)年には職員が使用する研修用シミュレータと同等の油圧式動揺装置を設置し、走行中の左右動、加減速時の前後動、対向列車の風圧による動揺まで再現しています。今でこそ同様の運転シミュレータは様々な鉄道博物館で見られますが、当時は例のないもので、高い人気を誇りました。

 一見地味ながら貴重なのが「トンネルの輪切り」の展示です。直径6.7mの実物の単線シールドトンネルに、レールや剛体架線、送電・通信ケーブル、蛍光灯などを設置し、普段は見られないトンネル内を完全再現しています。「建築限界」と「車両限界」を示す枠が設置され、隣には軌道モーターカー(作業用車)が鎮座するマニアックな仕様です。

 この他、地上からは見えない地下鉄だからこそ、地形の起伏やトンネルの勾配、立体交差構造や、建設現場のシールド工法を断面図で再現した各種ジオラマも見どころです。

 地下鉄博物館は2002(平成14)年7月に大規模リニューアルに着手します。開館16年目という中途半端なタイミングですが、これは博物館が入る東西線高架橋の耐震補強工事が必要になったから。2003(平成15)年6月まで1年弱にわたり休館して、大規模な改装が行われました。

 リニューアル最大の目玉は、丸ノ内線中野車両基地で保存されていた300形「301号車」の展示です。搬入にあたり博物館建物の壁、天井、柱の一部を撤去しており、まさに工事のタイミングでなければ実現しなかったものでした。1000形の隣に並べられました。

 開館20周年の2006(平成18)年には、副都心線建設工事で使用した実物のシールドマシンカッターディスク、開館30周年の2016(平成28)年には、同年に完全引退した銀座線01系車両のカットボディが展示されました。

 運転台部分のみ、台車もない状態なのは残念ですが、大型の車両を展示するスペースはなく、301号車の例からしても搬入そのものが困難でしょう。東京メトロは日比谷線3000系「3001号車」など、いくつかの保存車を有しており、将来的にはこれらも展示したいところです。

 地下鉄開通100周年に向けて地下鉄博物館の移転、拡張が議論された時期もあったようですが、コロナ禍で全て吹き飛んでしまいました。「最後の新線」である有楽町線、南北線延伸部は、地下鉄博物館が50周年を迎える2036年頃の開業を予定しています。建設時代の締めくくりとして博物館の移転、拡張が検討されることを期待します。