駅や商業施設などで見られる女性用トイレの長い行列。この長年の課題に対し、国土交通省が改善に向けたガイドラインを策定しました。
「女性の方が行列」は9割超の“共通認識”
駅や高速道路、商業施設などで、女性用トイレばかり長蛇の列になっている光景を見ることがあります。それを改善すべく、国土交通省が2026年6月、「トイレの便器数に係る基準と適用のあり方に関するガイドライン」をとりまとめました。
背景には、石破内閣時代の2025年7月「経済財政運営と改革の基本方針2025」において、女性用トイレの利用環境の改善に向けた対策の推進が位置付けられたことが挙げられています。「女性・高齢者の活躍」を支えるうえで、女性特有の健康課題(月経、妊娠・出産など)への本格的な対応が、国の主要政策として初めて明確に位置づけられました。それから官民合同で省庁横断的な議論が重ねられてきました。
ガイドラインでは、男女の性差による所要時間の違いなどを踏まえ、「利用者が概ね男女同数である施設においては、女性便器数が男性便器数(大便器と小便器の合計)以上となる基準とすること」を原則とする、とされました。すでに海外でも同様の基準を設けているケースもあるといいます。
国土交通省が2025年に実施したアンケート調査では、男性の90.7%、女性の97.4%が「女性の方が(トイレの)待ち時間が長い」と回答。特に「駅、スタジアム・アリーナ、サービスエリア・パーキングエリア、劇場・ホール」などで頻繁に行列が発生しているとの声が多く挙がりました。
問題の根底にあるのが、男性用便器(大便器と小便器の合計)の数に対し、女性用便器の数が少ない点です。例えば、駅の女性用便器数は男性用便器総数の平均0.63倍、空港では0.66倍にとどまっています。
施設が建設された当初は男性利用者が多いことを前提に設計されていたことが一因と考えられていますが、女性の社会進出が進むとともに、トイレの洋式化や温水洗浄便座の普及により快適性が向上した結果、男女ともにトイレの占有時間が増加傾向にあるといいます。
●「待ち時間を男女平等に」が根底
ある調査では、高速道路のSAにおける女性便器の平均占有時間は、2007年度の88秒から2016年度には117秒へと長くなっています。また、「身だしなみを整える」「化粧・着替えをする」「スマートフォンを操作する」といった行為が占有時間を延ばす一因となっています。これは男性用トイレも同様で、回転率の低い大便器の行列につながっていると考えられています。
そこで、「トイレの待ち時間が男女平等になるように」という考え方のもとでガイドラインが策定されました。ただし、利用実態は施設によっても大きく異なり、ただ便器を増やすだけでは対応できません。様々なケースに対応する取り組み事例なども併せて紹介されています。
イベントなどで利用者の男女比が大きく変わるスタジアムや劇場などでは、間仕切りを動かして男女のトイレ数を変更できる「可変トイレ」の導入や、清掃でトイレを長時間閉鎖しなくて済む「乾式清掃」の採用、滞留を防ぐ動線の工夫などの取り組みなどです。
もちろん、男性利用者が多い施設では男性用便器が多くなる場合も想定されており、あくまで施設の利用者構成の実態に合わせた設計が求められます。また、男性用トイレについても、大便器と小便器の比率を改めて検討する必要があるとしています。
国土交通省は、このガイドラインが広く活用され、トイレが整備されることに期待を寄せています。