日本自動車ジャーナリスト協会と、日産のイヴァン・エスピノーサCEOの意見交換会が開催されました。日産の業績不振の原因をどう分析し、今後はどのようなモデルを展開していく計画なのでしょうか。
「イヴァン」氏が考える日産の失敗
2026年5月、AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)の会員と、日産のイヴァン・エスピノーサCEOとの意見交換会が行われました。氏が考える日産の現在地と未来、そして会員の1人として参加した筆者(西川昇吾:モータージャーナリスト)が見た彼の人物像をお伝えします。
自動車ジャーナリスト団体であるAJAJですが、自動車メーカーのトップとの意見交換会などは滅多に行われないものです。しかし当日、エスピノーサ氏は「(自分のことを)是非“イヴァン”とフランクに呼んでほしい」と冒頭にあいさつし、会がスタートしました。
その“イヴァン”氏が日産のCEOへ就任したのは、2025年4月のこと。同社がホンダとの経営統合を断念し、2024年度決算で大きな赤字を計上した直後です。いわば日産の立て直しを任されたイヴァン氏ですが、まず「日産が失敗した理由をどのように考えている?」と質問したところ、「数字だけを追いかけていたのが失敗に繋がった」という答えが返ってきました。
イヴァン氏は、「日産はグローバルで800万台の生産台数を目指していたメーカーですが、この800万台を目指したあたりから、他社の製品を追いかけるようなクルマしか作らなくなってしまった」といいます。「リスクと数字だけを考えて、日産というメーカーの独自性を失ってしまった」ことが、経営悪化の要因だと分析しました。
また、イヴァン氏は「約15年前(2010年前後)の日産はそんなメーカーではなく、ユーザーを喜ばせることを第一とした良いクルマを作っていた」とも語りました。
そんなイヴァン氏は、日産の立て直しには「日産らしさを大切にすること」「自社に自信を持ってトレンドのパイオニアとなること」の2つが大切だと熱弁します。
「例えば新型『エルグランド』は、ドライバーズカーとしての一面を持つ、新たなコンセプトを持ったミニバンです。このように他社のモデルにはない個性を持ち、新しいトレンドを作るパイオニアとなるようなクルマを投入していきたい」(意訳)と、今後の展望を語りました。
「小型なファミリーカー」の計画を公表!
また近年の日産については、「日本市場のラインアップが手薄で、海外市場のことばかりを考えている」といった意見もしばしば見受けられます。この点に関して率直に疑問をぶつけたところ、以下のようなコメントが返ってきました。
「日本は技術力の高い自動車メーカーが集まっているマーケット。日本市場で頑張ることは、良い人材を集めることにも繋がると考えています。それは自動車メーカーとして成長し続けるために欠かせないことです。我々はそんな日本発祥の企業ですから、日本市場は当然大切にしていきたいと考えています」(意訳)。
さらにイヴァン氏は、正式発表が迫った新型「エルグランド」や「キックス」だけでなく、「小さなファミリーカーの投入を計画しています。他社でいえば、トヨタ『シエンタ』や『フリード』のような存在です」と、新しいモデルの投入を明言しました。
イヴァン氏によると前述の通り、これも他社のモデルを追いかける製品ではなく、将来このクラスで求められるクルマの姿と、日産らしさを兼ね備えた1台になるとのこと。「まだ具体的な企画内容や登場時期は明かせませんが、このモデルは絶対に投入します」と意気込みました。
意見交換会は約1時間半という限られた時間でしたが、イヴァン氏は日産のトップであるとともに、1人の熱狂的な“カーガイ” (クルマ好き)であると筆者は感じました。彼はどんな質問にも真剣かつ熱く答えていましたが、「スカイライン」や「GT-R」「シルビア」などに対する言葉には、明らかに一番熱がこもっていました。
特に、多くの日産ファンから期待されている次期GT-Rについては「私が在任している間に出したい。あのクルマは日産のアイコンで継続すべきモデルです」とコメント。またシルビアに関しても「とても市販化が難しいモデルであるのは理解しています。ただ、1人のクルマ好きとして是非とも作りたい」と語っていました。
イヴァン氏のように、クルマ好きとしても情熱的な人物が日産のトップになったことは、これからの日産にとって、そして日産ファンにとって良いニュースだと感じたイベントでした。