“空中停止できる戦闘機”という特異な性能で映画でも有名になった「ハリアーII」40年の歴史に幕!

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AV-8B「ハリアーII」は、 「飛行機なのに止まれる戦闘機」として航空ファン以外にも強い印象を残しました。その同機の運用がついに終了します。

空中に止まれるジェット機 米軍での役目終える

 固定翼機でありながら空中停止(ホバリング)できる――そんな独特な能力で知られた攻撃機、AV-8B「ハリアーII」が、ついにアメリカ海兵隊から姿を消します。映画『トゥルーライズ』(1994年)ではアーノルド・シュワルツェネッガー演じる主人公がハリアーを操り、高層ビル付近でホバリングする場面が登場したことでも知られ、「飛行機なのに止まれる戦闘機」として航空ファン以外にも強い印象を残しました。

 そのハリアーのアメリカ海兵隊での運用終了を記念する「ハリアー・サンダウン」が、2026年6月3日にノースカロライナ州のチェリーポイント海兵航空基地で開催されました。主催したのは第2海兵航空団で、最後までAV-8Bを運用してきた海兵攻撃飛行隊VMA-223「ブルドッグス」が中心となっています。

「サンダウン」は米軍で、部隊や装備の活動終了や退役を表す際に使われる言葉です。当日は現役・退役関係者や家族が集まり、歴代搭乗員や整備員への謝意が示されたほか、記念飛行や交流行事も行われました。式典のハイライトとなったのは、5機のハリアーIIによる編隊飛行でした。会場へ戻ってきたハリアーIIは、多くの関係者に迎えられながら着陸し、セレモニーでは定番の消防車による放水の出迎えを受けていました。

 これら会場での光景は、約40年にわたり続いた海兵隊ハリアー運用の節目を象徴するものとなりました。

なぜ海兵隊はハリアーを必要としたのか?

 AV-8BハリアーIIは1980年代からアメリカ海兵隊で本格運用されてきた攻撃機です。最大の特徴は胴体側面4カ所に装備された可変式ノズルで、これによってジェット排気の方向を変えられることです。あの有名なホバリングも、この可変ノズルを機体下方に向けることで可能となっています。しかし、本来の目的は短距離離陸・垂直着陸(STOVL)垂直離陸・垂直着陸(V/STOL)能力によって、出撃基地を限定しない柔軟な運用を実現することにありました。

 ハリアーIIは通常の固定翼機よりも短い距離の滑走路で離着陸することができ、強襲揚陸艦や前方作戦基地(FOB)、損傷した滑走路など、通常の航空基地以外からも運用できました。これによりハリアーIIは、地上戦力と航空戦力を密接に連携させた海兵隊独自の運用を支え、アメリカ海兵隊を象徴する航空機のひとつになりました。

 しかし2010年代に入ると、機体老朽化や整備負担の増加が課題となり、後継機への更新が本格化します。

 その役割を引き継いだのが、第5世代戦闘機であるF-35B「ライトニングII」です。F-35シリーズは空軍向けA型、海軍向けC型、海兵隊向けB型が存在しますが、最初に初期作戦能力を獲得したのは海兵隊のF-35Bであり、ハリアーIIの機種更新需要も早期実用化を後押ししたとされています。

 今回の「ハリアー・サンダウン」は、ハリアーII自体の最後の飛行を意味するものではありません。海兵隊関係者によると、一部機体は今後、博物館展示や保管施設への移送に伴って飛行する可能性があるそうです。また海外ではスペイン海軍やイタリア海軍が引き続きAV-8B系列の機体を運用しています。

 F-35Bは短距離離陸/垂直着陸(STOVL)となっており、離着陸の機能がハリアーIIとは若干違いますので、半世紀近く続いた“ジャンプジェット”の歴史は、米軍ではここでひと区切りを迎えます。しかし、滑走路に縛られず前線へ航空戦力を届けるという思想そのものは、F-35Bへと受け継がれていきます。