「あらゆるコストが切り詰められた時代」を色濃く反映した“ギリギリ国鉄形車両”に乗った 「ガチャ…」←何いまの音!? 世代交代進む四国で

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JR四国は普通列車用の新型車両を2026年6月27日に導入し、国鉄時代に製造されたディーゼル車両を順次置き換えます。一方、旧国鉄の分割民営化直前に導入された“ギリギリ国鉄形”のディーゼル車両は活躍を続けています。

パワフルで上り坂にも強い「キハ54形」お役御免に

 JR四国はディーゼルエンジンで発電した電力を使い、モーターを回して走る同社初のハイブリッド車両3600系の量産先行車の営業運転を2026年6月27日に始めます。最初の列車は徳島を14時半に出発する牟岐線の阿南(徳島県阿南市)行きとなります。量産車を含めて2両編成、計70両を順次製造し、徳島地区の高徳線・牟岐線・徳島線で普通列車として運用します。

 ステンレス製車体が銀色の光沢を放つ3600系が置き換えるのは、国鉄時代に製造された車体が鋼鉄製のディーゼル車両キハ47形です。一方、旧国鉄の分割民営化直前に導入された軽量ステンレス製車体の“ギリギリ国鉄形”ディーゼル車両は健在です。筆者が愛媛県で乗車すると、国鉄末期ならではの苦心の跡がうかがえました。

 この車両はキハ54形です。出力250馬力のディーゼルエンジンを2基搭載し、総出力は500馬力とパワフルなため上り坂にも強いのが特色です。

 国鉄は分割民営化後に厳しい経営になることが想定されたJR北海道、四国、九州の通称「三島会社」向けに、輸送の効率化と経営基盤安定化を目的としてキハ54形を発注して配属しました。

 うちJR四国に引き継がれたのは、1987年に製造された12両の0番台です。現在はいずれも松山運転所(愛媛県伊予市)に所属し、途中で内子線を通るルートを含めた予讃線松山―宇和島(同県宇和島市)間、予土線の宇和島―窪川(高知県四万十町)間で主に運用されています。

オレンジ色と緑色のワケは

 筆者が乗り込んだキハ54形0番台は、予讃線の松山発八幡浜(愛媛県八幡浜市)行きの普通列車です。愛媛県の特産品のミカンをモチーフにしたゆるキャラ「みきゃん」のイラストを片側の先頭に大きく装飾した「おさんぽなんよ号」(キハ54-7)1両で運用されていました。反対側の先頭に描いたイラストは、「宇和島観光PR部長」と銘打ったネコを題材としたキャラクター「伊達にゃんよ」です。

 2016年2月21日に登場した「おさんぽなんよ号」の「なんよ」には、走行場所に含まれている愛媛県・南予(なんよ)地方と、方言「伊予弁」の「なんよ」(「なのです」の意味)が引っかかっています。車体はオレンジ色と緑色が基調で、南予に多く見られるミカン畑をイメージしました。JR四国は「温暖な気候にはぐくまれた人情味と、自然豊かな山と海に恵まれた風土を表現している」と説明しています。

 運転士だけのワンマン列車に乗り込むと、車内の床に愛媛県の地図が記されていました。そこには大洲市や八幡浜市、宇和島市などが含まれる南予の位置が書き込まれ、地元の「ゆるキャラ」を紹介。全てがロングシートで、モケットは座席ごとにオレンジ色と緑色を交互に配置しています。

うかがえる国鉄末期の財政事情

 キハ54形が造られた当時を知る元JR役員は、筆者に対して「国鉄末期は財政が厳しかったため、新造車両もあらゆるコストが切り詰められた」と打ち明けました。キハ54-7が走り出すと、一例を「ガチャ」という音とともに体現しました。

 それはバス用を流用した出入り口の折り戸で、発車時と停車時、自動的に施錠・解錠するドアロックが作動した音です。ドアエンジンや空調装置、窓もバス用です。

 さらに台車や変速機は、廃車から流用しました。こうした爪に火をともすようなコスト抑制策を重ねたキハ54形は、新潟鉄工所(現・新潟トランシス)と富士重工業(現・スバル)によって造られました。

 うち新潟鉄工所は経営が悪化したため2001年に会社更生法の適用を申請し、破綻しました。現在は投資会社ジェイ・ウィル・パートナーズが運営するファンドが所有し、鉄道車両や除雪機械を製造しています。富士重工は2002年度をもって鉄道車両の新規生産を終了し、「採算が厳しかった」という鉄道車両事業から撤退しました。

運転士の“異例の呼びかけ”

「おさんぽなんよ号」は高架の向井原(伊予市)を発車後、伊予大洲(大洲市)方面への短絡線となる内子線方面ではなく、海回りの予讃線へと進みました。単線の線路が右側へカーブし、生い茂る草木をかき分けるように進んでいきます。次の高野川(伊予市)に着くと、運転士が停車中の車内放送でこのような“異例の呼びかけ”をしました。

「この先、右手に海がご覧いただけます。美しい海の景色をお楽しみください」

 観光列車ではない通常の普通列車のため、瀬戸内海の眺望が右手に広がることを伝えることは必須ではありません。しかし、この日は旅行者も多く乗り込む土曜日で、プラットホームの目の前に瀬戸内海が広がる下灘(伊予市)へ向かう観光客も大勢乗っていました。よって“異例の呼びかけ”は、観光客が絶景スポットを見逃さないための絶妙なアシストと言えそうです。

 伊予長浜(大洲市)では、反対方向の列車との行き違いで6分停車。列車にはトイレが付いていないため、停車時間中に駅のトイレへ向かう利用者もいました。

 入線した反対方向の列車は、鋼鉄製車体のディーゼル車両のキハ32形です。キハ54形と同じく旧国鉄末期に製造され、造られた21両はいずれもJR四国に引き継がれました。搭載しているのは出力250馬力のディーゼルエンジン1基だけで、2基あるキハ54形より一段とコスト低減が図られました。

 電化されていない予讃線の伊予市―宇和島間の普通列車は、内子線経由を含めてキハ54形とキハ32形ばかりでした。国鉄末期のコスト抑制という苦心の跡を“残り香”のように楽しむのに、うってつけの乗り鉄区間だと言えそうです。