沖縄本島の大動脈「国道58号」にはかつて、日本最大級のロータリー交差点がありました。その跡地と、周辺で進むバイパス計画の現状を取材しました。
日本最大級ロータリーの「痕跡」
沖縄本島西岸を縦に貫く大動脈「国道58号」は、県庁所在地である那覇市から北部の中心都市の名護市にかけて、拡幅工事や並行するバイパスの建設など、各所で改良が続けられています。
そのため那覇市から名護市までの間で国道58号が“ほぼ現道1本だけ”なのは、宜野湾市で国道58号「宜野湾バイパス」と合流する「伊佐(北)」交差点から、国道58号現道と「恩納南バイパス」が分岐する恩納村(おんなそん)の「仲泊」交差点までの区間、そして「恩納バイパス」の北端「瀬良垣」から「名護東道路」が分岐する「数久田IC」交差点までの区間のみとなっています。
このうち前者の嘉手納町内では、那覇方面からの片側3車線の国道58号のうち右側車線が沖縄市方面に分岐して県道74号となり、恩納村方面へは片側2車線で進みます。また反対の恩納村方面からは片側2車線の道に県道74号が合流、そのまま3車線となって那覇方向につながります。
ただ地図を見ると、この交差点は不自然に屈曲しているのがわかります。そしてその屈曲の内側は土地が円形に区画され、西側から北側にかけてはその円に沿う形で建物が建っています。
じつはここにはかつて、円形の交差点「嘉手納ロータリー」が設置されていました。その直径は日本最大規模の約120mで、現在の区画はその名残りを反映したものです。
当時の那覇市方面からの国道58号は、チェーンの洋菓子店「Jimmy’s(ジミー)」嘉手納店の先でゆるやかに左へ曲がり、このロータリーに南側からほぼ直角に進入し、ロータリーを半周して北側に抜ける構造でした。また県道74号の沖縄市方向へは、国道58号の右側レーンが高架橋となり、分岐したのちにロータリーの南東側に沿ってショートカットしていました。
ロータリーは今でいう「ラウンドアバウト」と同様の構造ですが、後者は交差点内の「環道」が優先という交通ルールがあり、一時停止を原則不要としている点が異なります。とはいえ、信号なしに多方向の交通をさばける利点は同じです。
しかし、流入する交通量がキャパシティを上回ると、ロータリー内にクルマが滞留し、接続する道路の渋滞につながります。またロータリー内では前後左右のクルマに気を配る必要があり、混雑が進むと交通事故のリスクも高まります。
新たなボトルネック解消へ「2つのバイパス」
この嘉手納ロータリーも、交通量の激増により信号が設けられるなど、ロータリー本来の機能を果たせなくなりました。そのため、嘉手納町の再開発事業「嘉手納タウンセンター開発事業」と連携する形でロータリーを廃止し高架橋を撤去、国道58号旧道はジミー前のカーブがロータリー東端に向けて直進する新道に付け替えられ、ロータリー東側に県道74号との三叉路が設置されました。
ロータリー廃止は2007年のこと。国道58号旧道と新道との間の再開発区域には、「嘉手納町役場」「嘉手納警察署」などが移転しました。また旧道が走っていた部分はこれら施設の駐車場として活用されています。
さて、国道58号は前述のように、この嘉手納町を挟む宜野湾市から読谷村の区間だけが、開発から取り残されている印象があります。この区間は、とくに目立った渋滞が頻発するような状況ではありませんが、国道58号現道の他の区間に比べて信号は多めで、ストップアンドゴーが続きます。
ロータリーの北側ではバイパス整備が進む
嘉手納ロータリー北側のかつて原野に近かった読谷村「大湾」交差点から「伊良皆」交差点間の沿道には、近年になり郊外型のショッピングモールや自動車ディーラーが複数開業し、出入りするクルマの増加で交通の流れが悪化しています。このままさらに開発が進むと、この付近が国道58号の新たなボトルネックになる可能性があります。
そこで現在、この区間を別の道路でバイパスする「読谷道路」「嘉手納バイパス」が事業化されています。このうち先行して整備が進んでいるのが読谷道路です。読谷道路は国道58号現道の約1km西側を並行して走り、北は読谷村座間味付近で国道58号現道に合流、南は同村古堅(ふるげん)で嘉手納バイパスに接続します。
現在すでに読谷村内で2か所、合計2.8kmが片側1車線で暫定供用されています。用地買収は2025年3月末で約99%終了しており、未開通区間でも各所で工事が進められています。
難航する「嘉手納バイパス」
一方、ロータリーを含む嘉手納町内の国道58号も、現道の海側で「嘉手納バイパス」が計画されています。読谷道路の南端に接続し、比謝川の河口付近を橋で渡り、嘉手納町の市街地へ抜けるルートです。
その構想自体は古く、事業化は嘉手納ロータリー改良の20年前、1987年でした。しかし近接する米軍管理地との調整でルート変更が行われるなどして時間を要し、現在はまだ調査設計の段階で、用地買収は約90%まで進んでいるものの、工事の本格化には至っていません。
計画ルートは比謝川の河口付近を通り、国道58号現道の海側、嘉手納町にある米軍「陸軍貯油施設」付近に至る形ですが、ここから国道58号現道とどのように接続するかは未定です。この区間の事業化においてもあらためて米軍との調整が必要と思われ、さらに時間がかかりそうです。
読谷道路が完成すれば、先に挙げた国道58号現道の大湾から伊良皆までの交通転換はある程度進むと思われます。しかし読谷村から嘉手納町内の国道58号現道の交通量を減らすには、嘉手納バイパスの完成、さらに国道58号とのスムーズな接続が不可欠です。早期の米軍との調整、ルート選定、そして工事着手を望みたいところです。