名鉄広見線ついに存続断念へ「年間3.4億は無理…」現地で乗ってわかった「廃止やむなし」の切実な事情

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岐阜県御嵩町は、名鉄広見線の新可児~御嵩間について「みなし上下分離方式」による存続協議を終了(断念)したと発表しました。年間3.4億円の維持負担やクルマ社会の進展など、現地を歩いて切実な事情を探ります。

みなし上下分離方式での運行も断念

 岐阜県御嵩町は2026年5月29日、名鉄広見線(新可児~御嵩間7.4km)について、みなし上下分離方式による鉄道存続協議を終了させることを明らかにしました。

「みなし上下分離方式」とは、当該路線を走る電車(上)の運行部分と、その線路や電線といった維持管理部分(下)を分離。自治体側が後者(下部分)を負担することで、鉄道会社の負担を減らし、公共交通手段としての鉄道を存続させる方法です。

 これまで御嵩町をはじめ、可児市、八百津町の沿線3市町で名鉄と鉄道存続協議を行ってきましたが、それを終わらせることになった理由について、次の4点を挙げています。

 まず1つ目が「低燃費車の普及、道路整備等による車社会のさらなる進展、人口減少」により、利用者の増加が見込めないことです。2つ目がみなし上下分離方式で運営した場合、自治体側に年間約3.4億円の負担が発生し、他の住民サービスへの影響が避けられない点です。

 3つ目が近年の物価高や人件費上昇によって事業費、沿線市町負担額がさらに増える可能性があること。そして4つ目が、災害発生時に沿線市町が担う“下”部分の復旧費も自治体側の負担となり、突発的な費用負担への対応について不安が残るからとしています。

 前出の3市町は2025年8月から名鉄と協議を行ってきましたが、これらを総合的に勘案した結果、協議の断念に至りました。今後はおそらく名鉄の判断のもとで、廃止に向けた検討が進められると思われます。

 このニュースを見て、愛知県に住む筆者(鈴木伊玖馬:乗りもの好きライター)も週末の休みを利用して広見線を見に行ってきました。

現地を歩いて痛感した「クルマ社会」と、存続断念のリアル

 初めに訪れたのは、広見線の終着駅となる御嵩駅です。一見すると有人駅のようですが、駅舎内に設けられているのは御嵩町の観光案内所のみで駅員は常駐していません。

 券売機で切符を購入したのち、ホームでしばらく待っていると、やってきたのは2両編成のワンマン列車。ローカル線らしい昭和感を漂わせています。目指すは新可児駅。この駅では名鉄犬山方面もしくは、隣接するJR可児駅を利用してJR太多線への乗り換えが可能です。

 御嵩駅から新可児駅までの所要時間は12分ほどです。沿線には、最初はのどかな田んぼが広がります。そして明智駅を過ぎたあたりから街中へと入り、可児川を越えたあたりで大きくカーブすると新可児駅に到着します。

 車内のレトロな雰囲気は、窓から見える風景とよくマッチしており、非常に面白く感じました。ちなみに、ローカル線ながら1時間に2本程度の間隔で運行しているので、利便性はそこまで悪くありません。

 とはいえ、街を歩いてみると存続断念に至った理由について、納得する部分も感じました。それが一般道の整備具合です。可児市には、国道21号を中心に自動車で走りやすい状況が揃っています。

 自動車で御嵩駅から新可児駅まで向かった場合の所要時間は15分ほどであり、電車を使うのと、たいして変わりません。また、新可児駅/可児駅の周辺には店舗や住宅も多いため、夜などは新可児までクルマで迎えに行く方が便利で、かつ安全だと感じました。

 加えて、3市町の人口は合計で12万人を超えますが、名鉄広見線を利用可能な沿線住民は極めて限られます。それこそ、前出の八百津町は存続協議に名を連ねているものの、町内に広見線はおろか、鉄道は走っていません。

 こうしたことを踏まえると、負担を増やすより路線廃止へ向かう方が住民の理解も得やすいという結論になったのではないかと思われます。

 沿線3市町では、現在の利用者への配慮や代替の交通機関の準備もあり、2028年度末までの運行継続を名鉄に要望しています。