沖縄県浦添市で国道58号の8車線化事業が完成間近です。並行する道路も存在するのになぜ拡幅が行われたのでしょうか、その背景には沖縄特有の事情がありました。
人口10万人クラスに国道3本、計14車線
沖縄県浦添市で進められている国道58号の改良事業「浦添拡幅」が完成間近となっています。この事業は、浦添市「城間(ぐすくま)」交差点から、那覇市に入ってすぐの「安謝(あじゃ)」交差点までを、事業前の6車線(片側3車線)から8車線(片側4車線)へ拡幅するものです。
国道58号は、鹿児島県鹿児島市から沖縄県那覇市に至る一般国道で、沖縄県内区間は沖縄本島の西岸を縦貫する大動脈です。浦添市は那覇市の北隣にある人口約11.5万人の市で、市街地は那覇市と一体化し、那覇都市圏の一部を形成しています。
しかし浦添市の地図を見ると、市内には南北方向の道路として、拡幅される国道58号の海沿いに国道58号のバイパス「浦添北道路」が、より内陸部には「国道330号」が並行して走っています。そのどちらもが4車線(片側2車線)であり、人口10万人程度の街としては十分なスペックに思えます。
ではなぜ、その両者に挟まれた6車線の国道58号現道を、さらに2車線増やす工事が行われているのでしょうか。じつはその背景には、浦添市をとりまく深刻な道路交通環境がありました。
九州・沖縄でダントツの交通量
沖縄県は典型的なクルマ社会で、鉄道網が未発達なことにより、都市部でも自動車交通への依存度が高くなっています。モノレール「ゆいレール」の沿線以外は、仕事での移動はもちろん、通勤もクルマが欠かせない状態で、那覇都市圏の道路混雑時の旅行速度は東京23区など三大都市圏と同等レベルとされています。
なかでも浦添市の状況は、国土交通省の「全国道路・街路交通情勢調査」からも明らかです。この調査での「九州・沖縄地区の24時間交通量」では、1位から5位までのうち、1位と2位が国道330号、3位と5位が国道58号で、これらすべてが浦添市内の区間なのです。
九州最大の都市である福岡市の幹線道路「国道3号」は福岡市東区内の区間が4位、6位、7位に入っていますが、続く8位も浦添市から続く国道58号の那覇市内の区間です。
このデータは浦添北道路の開通前、2015年のものであることから、国道58号、国道330号については若干の異動があるものと思われます。しかし、それら両道路から浦添北道路に交通転換した交通量も合計して考えると、全体の傾向に大きな変化はないと推定できるでしょう。
交通を分断する“基地”と“地形”
ではなぜ、このように国道58号、国道330号に多くのクルマが集中するのでしょうか。その理由として考えられるのが、地理的な要因と、広大な米軍基地の存在です。
浦添市は、近接する宜野湾市(ぎのわんし)、北谷町(ちゃたんちょう)や沖縄市、そして沖縄北部の各地域と那覇市との間に位置し、沖縄本島の南北方向の通過交通が集中します。また市内は海沿い以外は山がちで、傾斜地には住宅が密集しており、国道58号、国道330号以外に南北方向の移動に使えるのは狭く信号が多い県道251号だけです。
しかも平坦な海沿いは広大な「米軍牧港補給地区(キャンプ・キンザー)」で占められ、浦添北道路と国道58号とを隔てています。また浦添市の北、宜野湾市には「普天間基地」があり、こちらは国道58号と330号とを隔てています。
一般の都市では混雑する道路からより空いた道路に転換する交通により交通量の平準化が図られますが、浦添北道路、国道58号、国道330号の間では、米軍基地を通過する道路がなく、そうした移動ができません。
消去法で選ばれた「国道58号」拡幅
交通集中をさらに加速させる要因もあります。国道330号は浦添市の東端で沖縄自動車道「西原IC」に接続しています。沖縄道は西原ICから一気に南下し、那覇市の東側に大きく回り込むため、沖縄北部から沖縄道で那覇市を目指すクルマは西原ICから国道330号にそのまま流入するのが通例で、これが国道330号の混雑に拍車をかけています。
その国道330号は丘陵地を切り通しやトンネル、高架や盛り土で貫いていますが、左右には市街地が広がり、現在以上の拡幅は困難な状態です。しかし国道58号は、キャンプ・キンザーの一部返還により、道路用地の確保が可能でした。
こうしたことから、浦添市の道路交通環境を改善するため、通過交通の一部を浦添北道路に逃がした上で、交通量上位の国道330号ではなく、国道58号の拡幅が選ばれたのでしょう。
なお国道58号の8車線への拡幅は2022年3月に暫定供用され、朝夕の渋滞緩和に大きな効果を発揮しました。その後も歩道などの付帯工事が続けられており、2026年5月現在は中央分離帯の整備工事などが行われ、現地の掲示板での工事期間は6月30日までとなっています。