海自「たいげい型」に再び脚光? 豪海軍の原子力潜水艦導入まで既存艦の延命方針が立てられるも リスク高すぎで批判起きる

世界の空調市場、生成AIに期待

オーストラリア国防省は2026年5月19日、運用中のコリンズ級潜水艦の耐用年数延長を発表しました。この決定の背景にはいろいろ複雑な事情がります。

既存潜水艦の延命が決定その理由とは?

 オーストラリア国防省は2026年5月19日、運用中のコリンズ級潜水艦の耐用年数延長を発表しました。

 この決定は、オーストラリア海軍が通常動力潜水艦から原子力潜水艦への移行を進める中での措置です。コリンズ級潜水艦は1996〜2003年にかけて建造されており、同国海軍は6隻を保有しています。

 延命措置により、リスク低減、能力向上、稼働率の維持を図り、原子力潜水艦艦隊への移行期間中においても海上戦力を維持する体制を構築します。延命改修は2番艦の「ファーンコム」から開始され、2040年代までの運用が想定されています。

 この決定に対し、リチャード・マールズ副首相は「これらの決定は、アルバニージー政権が、現在そして将来にわたりコリンズ級潜水艦を強力かつ高性能な攻撃・抑止能力として維持することにコミットしていることを改めて示すものです」と述べました。そのうえで、「通常動力型から原子力潜水艦への移行期間においても優位性を維持するためには、6隻すべてのコリンズ級潜水艦の寿命延長が極めて重要です」と、延命改修の重要性を強調しました。

 このような大規模な延命措置が必要となった背景には、次期潜水艦の選定が長期化・迷走したことも一因として挙げられます。当初、コリンズ級の後継としては通常動力潜水艦の整備が想定されており、2009年の防衛白書において新型潜水艦導入の方針が示されました。

 2010年代には、日本案(そうりゅう型ベース)、ドイツ案、フランス案が比較検討されましたが、その過程でアジア太平洋地域における安全保障環境の変化や長距離展開能力への要求の高まりを背景に、原子力潜水艦の必要性が次第に議論されるようになりました。
 その結果、2021年にはフランスとの通常動力潜水艦建造契約は破棄され、同時にアメリカ・イギリスとの安全保障枠組みであるAUKUSの一環として、原子力潜水艦取得計画へと移行することが発表されました。

 こうした先送りの連続により延命計画には多額の予算が必要となり、その規模は110億豪ドル(約80億米ドル:約1兆2400億円)に達するとされています。ただし、オーストラリア会計検査院(ANAO)は、今後さらに大きな追加費用が発生する可能性を指摘しています。また同機関は、「遅延が積み重なり、能力上のリスクも解消されていない」と述べ、事故リスクや原子力潜水艦の納入遅延などについても懸念を示しました。

実際に遅延する可能性は高いかも!?

 実際に遅延の可能性は十分にあります。AUKUSの枠組みにより2030年代から供給される予定の原子力潜水艦は、アメリカ製のバージニア級攻撃型原子力潜水艦です。この艦はアメリカ国内の造船所で建造されたものを、オーストラリア海軍へ移管・売却する方式が想定されています。しかし現状、アメリカの艦艇建造は遅延傾向にあり、自国海軍向けの艦艇ですら年単位の遅れが発生することは珍しくありません。

 さらに、新たに計画されているトランプ級戦艦についても原子炉搭載型となる方針が2026年5月に明らかになっています。巨大な海軍を維持するアメリカにおいても、原子炉搭載艦を建造できる造船所は限られており、新型艦の建造に加え、既存艦の整備負担も重なっています。実際、オーストラリア国内でも、予定通り潜水艦が配備されるのかについて疑問の声が報じられています。

 一部の専門家の間では、再び通常動力潜水艦の導入を検討すべきではないかという意見もあります。海上自衛隊が運用するたいげい型潜水艦もその候補の一つとして挙げられていますが、オーストラリア政府は現時点で中継ぎとなる通常動力潜水艦の追加導入は行わない方針です。