台湾、対中防衛力強化急ぐ=内外にハードル、頼総統就任2年―地方選前に与野党対立

AI需要 電子部品の需給ひっ迫へ

 【台北時事】台湾・民進党の頼清徳総統が就任して20日で2年。任期4年の折り返しを迎えた頼氏は、中国の軍事的威圧に対抗するため防衛力強化を急いでいる。ところが無人機(ドローン)などの購入に向けた防衛予算は対立する野党の反対で削減され、トランプ米大統領は台湾向け武器売却を承認するか明言を避けた。内外のハードルが頼政権の行く手に立ちふさがる。
 ◇無人機産業を育成
 中国の侵攻に備える頼政権は、安価な武器で防御する「非対称戦」を重視。無人機製造を半導体に続く成長産業に位置付け、育成に本腰を入れている。中国の影響を排除した「非レッド」製品に対する米欧市場の需要も追い風だ。
 台湾経済部(経済省)によると、2025年の台湾の無人機生産額は前年比2.5倍超の129億台湾ドル(約650億円)。25年の無人機輸出額は9300万米ドル(約150億円)で、前年の約21倍に急成長した。
 台湾国防部(国防省)のシンクタンク、国防安全研究院国防戦略・資源研究所の蘇紫雲所長は、無人機産業が発達すれば「仮に中国が台湾を封鎖しても製造を継続できる」と意義を説く。
 頼政権は昨年、26~33年の8年間を対象とした1兆2500億台湾ドル(約6兆3000億円)の防衛特別予算に関する条例案を立法院(国会)に提出。20万機超の無人機の調達経費も盛り込んだ。中部・台中市で無人機や無人艇を製造する「雷虎科技」の蘇聖傑社長は4月、記者団の取材に「継続的な投資が可能になる」と予算成立に期待を寄せていた。
 しかし立法院では、対中融和路線の最大野党・国民党が第2野党・民衆党と組んで過半数の勢力を形成。国民党は条例案が「不透明」などと批判し、今月8日の審議で米国製武器購入費の7800億台湾ドル(約3兆9000億円)のみが認められ、台湾製無人機の購入費用は削除された。
 ◇宙に浮く武器売却
 さらに立法院では19日、野党が提出した憲政史上初の総統弾劾案が採決された。野党は可決に必要な3分の2の議席を持たず否決となったが、28年総統選の前哨戦となる統一地方選を11月に控え、激化する与野党対立を浮き彫りにした。
 頼氏が防衛予算拡大に取り組むのは、後ろ盾として頼る米政権の要求に基づく。頼氏は防衛費を30年までにGDP(域内総生産)の5%に高める目標を打ち出した。だが、肝心のトランプ氏は今月の米中首脳会談後、台湾向け武器追加売却を「対中カード」と位置付け、承認するかあいまいな態度を示した。
 台湾では動揺が広がっており、対米不信感が高まり米台間に亀裂が走れば、台湾統一を目指す中国が望む展開となる。こうした事態を避けたい頼氏は17日、フェイスブックで「台湾の防衛力強化を助けてくれている」とトランプ氏への謝意を表明。その上で、武器売却は「台湾の安全保障に対する米国の約束だ」と訴えた。 
〔写真説明〕台湾の頼清徳総統=5日、桃園市(EPA時事)
〔写真説明〕台湾中部・台中市で無人機や無人艇を製造する「雷虎科技」の敷地に展示された製品=4月21日
〔写真説明〕19日、台北の台湾立法院(国会)で、総統弾劾案の投票後に開票作業を行う議事担当者ら