アメリカ空母の飛行甲板ど真ん中から突如せり出す「謎の小部屋」。戦闘機が行き交う邪魔な場所に、なぜわざわざ設けられているのでしょうか? 通称「バブル」と呼ばれる秘密設備の正体と驚きの役割に迫ります。
なぜそんな邪魔な場所に!? 甲板のど真ん中にある「謎の小部屋」
アメリカが誇る原子力空母のニミッツ級や、最新のジェラルド・R・フォード級など、一部の空母の飛行甲板をよく見ると、ど真ん中に突き出たような小部屋を発見します。
艦の前方に備える2本の射出用カタパルトに挟まれる形で、まさしく飛行甲板の中央に位置するところに設けられていますが、これでは艦載機の取り回しに極めて邪魔ではないでしょうか。そのような場所にある小部屋、これはいったい何なのでしょうか。
そもそも空母での飛行機の取り回しというと、世界的な大ヒット映画『トップガン』のオープニングシーンを思い浮かべる人も多いでしょう。F-14「トムキャット」戦闘機を発艦させようと、多くの甲板作業員、いわゆるレインボー・ギャングたちが活動しています。
なかでも、ひときわ印象的な動きをしているのが、イエローベストを着たカタパルト発艦士官でしょう。
ただ、彼らカタパルト発艦士官は、空母の存在価値の根源ともいえる艦載機を発艦させるという最重要ながら最も事故発生が心配される特別な職務に従事するため、吹きさらしの状況下では、関連する各部署からの報告や指示を確実に把握できない懸念を抱えていました。
そこでニミッツ級空母6番艦「ジョージ・ワシントン」から、艦首の第1と第2のカタパルトの間と、アングルドデッキの第3と第4のカタパルトの間にそれぞれ1基ずつ、「統合カタパルト管制室」、通称「ICCS」 という名の、カタパルト発艦を指揮する小部屋が設置されたのです(のちに1~5番艦にも増設)。
戦闘機に踏まれても平気!? 出たり引っ込んだりする「バブル」の秘密
ICCSは、必要に応じて飛行甲板に突出させたり引き込むことができる隠顕(いんとん)式で、きわめて頑丈に造られており、突出時にうっかり艦上機が上を踏んづけてしまったり、事故で艦上機がぶつかって炎上しても破壊されない強度を備えているといわれます。
ICCSの内部には、主に艦上機の発艦に関連する情報に加えて簡単な艦の運行状況なども表示され、内部に座ったカタパルト発艦士官は、それらを確認しながら、安全かつ確実に艦載機を射出させることが可能です。また、ここは、万一NBC(核・生物・化学)兵器が使われた際は、外気を遮断し密閉することが可能であり、それらが大気中を漂っていても支障なく発艦させる役割も担っています。
なお、ICCSはアメリカの原子力空母だけでなく、フランスの原子力空母「シャルル・ド・ゴール」や、中国の最新空母「福建」にも設けられています。
空母乗組員たちから「バブル」という通称で呼ばれるこのICCS、普段は邪魔にならないよう甲板下に収納されるため、見付けることができません。発艦作業を実施するときのみせり出してくる、まさに空母の飛行甲板に隠された「秘密の小部屋」と言えるでしょう。