ラシン・サンタンデール、15季ぶりにラ・リーガへ! 国際指名手配犯の元会長に破産に追い込まれた“古豪”が復活

スマホに1000個「MLCC」とは?

 ラシン・サンタンデールが、2011-12シーズン以来となるラ・リーガ復帰を決めた。

 止まない雨はない。“カンタブリアの古豪”が、14年の歳月を経て、トップリーグに帰ってくる。セグンダ(スペイン2部)第40節が16日に行われ、ラシン・サンタンデールは、アンドレス・マルティンのドブレーテにアシエル・ビジャリブレとスレイマン・カマラのゴールで、バジャドリードに4-1で勝利。同時刻開催の3位アルメリアが負け、残り2試合で勝ち点差が『7』にまで広がり、2011-12シーズン以来のラ・リーガ復帰が決定した。

[写真]=Getty Images

■ラシン・サンタンデール、再出発の物語

 2014年1月30日、カンタブリアの天気は雨だった。ラシンギスタス(ファンの愛称)の心模様を映したのか、はたまた再建を前に過去を浄化するものだったのかは、神のみぞが知る。ただこの日、コパ・デル・レイ(国王杯)・準々決勝2ndレグのレアル・ソシエダ戦が本拠地『エル・サルディネーロ』で行われ、若きヘスス・ヒル・マンサーノ主審がキックオフから1分後に、ファイナルホイッスルを吹いたという事実だけは、世界中のフットボールファンに深く記憶されている。

 1913年に誕生したラシン・サンタンデールは、1929年に創設されたラ・リーガの“オリジナル10”の一つで、これまでメジャータイトルにこそ縁がなかったものの、トップカテゴリーで通算44シーズンもしのぎを削った、由緒あるクラブだ。後に、監督として帰還するキケ・セティエンやペドロ・ムニティス、ゴンサーロ・コルサやセルヒオ・カナレス、パブロ・トーレといった逸材を輩出したほか、マルセリーノ・ガルシア・トラルが指揮を取った2008-09シーズンには、UEFAカップ(現:ヨーロッパリーグ)でマンチェスター・Cを撃破するなど、強盛を誇った。

 しかし2011年1月、インド人実業家のアーサン・アリ・サイド氏にクラブを買収されたことで、ラシン・サンタンデールの運命は大きく変わった。当時、選手の給料未払いなどが発生するほどの財政難に陥っていたクラブにとって、多額の負債を肩代わりすると公言した“ミスター・アリ”は、救世主のような存在だった。が、その半年後には、詐欺行為の発覚でインターポールに指名手配される国際的な犯罪者となって行方をくらました一方で、クラブ売却は頑なに固辞。資金繰りの当てが外れたことで、立ち行かなくなったラシン・サンタンデールは、同年夏に会社更生法の適用を申請するに至った。

 そこからの凋落は、あっという間だった。2011-12シーズンに最下位でトップカテゴリーでの生活に終止符を打つと、翌2012-13シーズンも2部で20位と低迷。まさかの2季連続降格で、3部にまで転落したのだ。

 そして2013-14シーズン、国王杯で快進撃を見せてベスト8入りを果たした“古豪”は、再び国内、ひいては国外から注目を集めることになる。そう、レアル・ソシエダとの国王杯・準々決勝2ndレグで実施した、“ボイコット”によってだ。後に、イギリスメディア『BBC』に“ゴーストゲーム”と称された、この出来事は、依然として困窮する財政状況により給料未払いが続いたことに対する抗議であり、何より“ミスター・アリ”の息がかかったアンヘル・ラビン会長の退任を求めるシュプレヒコールだった。キックオフと同時にプレーを拒否した選手たちは、主審にボイコットする旨を伝えた上で、不戦敗が成立。試合時間は、わずか1分だった。降りしきる雨に来し方行く末を重ねながら、ラシン・サンタンデールは、再建に向けた第一歩を踏み出したのだ。

 こうして過去と決別したラシン・サンタンデールは、その後数年間に渡って2部と3部を彷徨うシーズン(この間、財政状況は少しずつ改善)を過ごしたが、2022-23シーズンにセグンダに復帰。そして同年12月に就任した、ホセ・アルベルト・ロペス監督が植え付けた攻撃的なスタイルの下で、着実に力をつけていく。2023-24シーズンは7位、2024-25シーズンは昇格プレーオフで敗退したものの一時は首位に立つなど、トップカテゴリーへの返り咲きという途方もない夢が、現実味を帯び始めていた。

 迎えた、ホセ・アルベルト・ロペス監督体制4年目となる今シーズン。ラシン・サンタンデールは、開幕節から上位をキープしており、とりわけ、2位デポルティーボ、3位アルメリア、4位マラガ(第41節に2度目の対戦)との直接対決には5戦全勝と圧巻の強さ。今冬に、リーグ戦18試合8得点のジェレミー・アレバロがシュトゥットガルトに引き抜かれたものの、白眉の2列目(イニゴ・ビセンテ、ペイオ・カナレス、アンドレス・マルティン)を擁した“ロス・モンタニェセス(クラブの愛称)”は、第14節を最後に自動昇格圏内から一度も落ちることなく、ついにラ・リーガへの復帰を結実させた。

 ボイコットしたレアル・ソシエダ戦後、『エル・サルディネーロ』に集まったラシンギスタスは、チームの決断を称え、この先の道もともに歩もう、と誓った。あの日から12年、この土曜の午後も生憎の空模様だった。それでも、ピッチに残った、足掻き踠きながらクラブ存続の危機を乗り越えてきたという“澪”に反射する歓喜は、太陽のように輝いていた。