日本モータースポーツの聖地「鈴鹿サーキット」が、実は台湾にも存在します。本家のサーキットを10分の1にスケールダウンしたというコースで、実際にカートレースに参加してみました。
高雄に実在「1/10鈴鹿サーキット」の正体とは?
三重県鈴鹿市にある「鈴鹿サーキット」は、言わずと知れた日本のモータースポーツの“聖地”です。しかし筆者(松田義人:ライター・編集者)は、海の向こうの台湾にも「鈴鹿サーキット」が存在すると聞きつけました。一体どういうことなのでしょうか。
鈴鹿サーキットは日本初の国際レーシングコースであり、4輪では「F1日本グランプリ」、2輪では「鈴鹿8時間耐久ロードレース」などのビッグレースが行われることで知られています。また、コース全長は約5.8kmと国内最長を誇るうえに、世界的にも珍しい、立体交差の8の字レイアウトを持つのも特徴です。
そんな鈴鹿サーキットが、なんと台湾の南部・高雄にも実在します。正式な施設名は「SUZUKA CIRCUIT PARK(鈴鹿賽道楽園)」で、2016年に営業が始まりました。
本家の鈴鹿サーキットを運営するホンダモビリティランドが、台湾のレジャー企業にライセンスを提供して作られた公式のモビリティテーマパークとのことで、「レース場を公式に輸出した」例は、日本ではこれが初めてだそうです。
しかし、この施設の話を最初に聞いたときは耳を疑いました。というのも台湾は、面積で言えば九州ほどの大きさしかありません。
年に数回は台湾を訪れている筆者は「全長5.8kmを超える鈴鹿サーキットを、高雄のどこに作ったのだろう?」と思ったのですが、なんと「SUZUKA CIRCUIT PARK(鈴鹿賽道楽園)」は、本家のコースを10分の1サイズに縮小したもの。走れるのは小型のレーシングカートであり、来場客が自らハンドルを握ってレースができるアトラクション施設になっているのです。
台湾では本格的なモータースポーツはそう盛んではないものの、地方部やリゾート地には、娯楽施設としてのカートレース場やバギー場などが存在します。こういった現地特有のニーズもあって、営業が実現したのではないかと考えられます。
サイズは可愛いけど「値段」は可愛くない?
「SUZUKA CIRCUIT PARK(鈴鹿賽道楽園)」があるのは、高雄空港近くの工業地帯。高雄の中心地から10kmほど離れたエリアです。
もちろん、日本人でもカートレースを楽しむことができますが、訪れてすぐにカートに乗れるとは限らないため、事前予約しておいたほうが良いようです。筆者は直接電話で予約をしましたが、日本からだと「KKday」などのチケッティングサイトで、日本語での予約が可能です。
「日本人が、それも1人でカートに乗りに来た」となると“変人”に思われるのでは、とも危惧しましたが、予約当日の時間ピッタリに「SUZUKA CIRCUIT PARK(鈴鹿賽道楽園)」を訪れると、ほかにも1人で乗りに来ている人が数人いました。
受付での応対も非常にスムーズで、手続き後は事前講習とレース出場の時間が書かれたレシートに加え、日本語で書かれた説明書も渡してくれました。内容もわかりやすく、実に親切だと感じました。
しかしやや衝撃だったのが、その価格です。カートは2種類あり、1人乗りの単独カートは約8分の走行で650元(約3250円)、2人乗りのタンデムカートは約8分で850元(約4250円)、さらに諸経費としてそれぞれ100元(約500円)がかかります。なかなか強気の価格設定ですが、それに見合うか、それ以上の「鈴鹿の興奮」が体験できるのかもと思いつつ、代金を支払いました。
「レース前の講習時間」になり講習室へ。ここでは巨大なスクリーンで、「カートに乗り、コースを走り、カートを降りるまでの注意点」をまとめた数分間の映像を見つつ、現場の講師が補足の解説を入れていました。
ここでも「日本人が来た」ということで、日本語が少し喋れる若いスタッフが来て、親切に説明してくれました。安全面ではかなり気を配っていることが伝わってきます。
ただ同時に、筆者は「それだけレースが過激なんじゃないか」とも思い、気分が高揚。このとき、頭の中では日本のF1中継のテーマ曲だった、T-SQUAREの『TRUTH』が流れていました。
いよいよ「台湾のスズカ」レースに出走!
講習を終え、いよいよカート乗車室へ。室内では、格闘技イベントのラウンド間に流れるような壮大なBGMが流れていましたが、実はこれは、現在のF1レースのテーマ曲である模様。「今はもうT-SQUAREじゃないんだな」と思いつつ、グローブとヘルメットを装着しました。
その後は乗車室からピットへ入り、スタッフの案内に従ってカートに乗り込みます。カートはもともと背の低い乗りものですが、マシンはかなりのシャコタン仕様。座る位置は地面からわずか十数cmほどで、路面がそのまま見えるスカスカな構造のため、この時点で結構な臨場感がありました。また、ハンドルも相当に重たいセッティングでした。
そしてコースインしてグリッドにつくと、「プ、プ、プ、プーン!」という音とともに、いよいよレースがスタートしました。筆者が出走した回には、他に5名ほどの参加者がいましたが、みんなガンガンカーブを攻めていきます。スタート前は高揚していた筆者ですが、実際に走り出すと、ビビってなかなかスピードが出せません。
特に、本家の鈴鹿サーキットの「10倍」の速さで迫りくるカーブでは、かつて教習所で習った「スローイン・ファストアウト」の原則を守りすぎたうえに、ハンドルの重さにも手こずり、思うように駆け抜けられませんでした。
気づけば、さっき一緒に走り始めた他のレーサーに続々と抜かれ、あっという間に周回遅れになってしまいました。さらに何周か抜かれて遅れを取ったところで、スタッフから「あと1分の合図」が。なんとか最後の1周を走り抜き、無事にピットへと戻ることができました。
カートを降りて乗車室に戻ると、壁に「本日の成績」リストが貼り出されていましたが、もちろん筆者がビリ。恥ずかしい限りですが、なかなか貴重な体験ではありました。
「SUZUKA CIRCUIT PARK(鈴鹿賽道楽園)」のカートレースは、費用こそ少々値が張りますが、レースファンはもちろん、乗りものが好きな方なら必ず楽しめるアトラクションだと思いました。台湾南部を訪れる方には、オススメの施設です。