長年にわたる安全運転の「証」であり、実利的なメリットをもたらすのが、自動車保険の「等級」です。クルマを一時手放し、次にまた乗る際、この等級を引き継ぐことはできるのでしょうか。
事故ると保険料「倍増」も!? 自動車保険「等級」のシビアな仕組み
自動車保険の任意保険は「ノンフリート等級(以下、等級)」によって、保険料からの割引率、割増率が決まります。何らかの理由で一定期間、クルマを手放し、その後に再び保険加入するような場合、自らの安全運転の「証」ともいえる等級はどうなるのでしょうか。
はじめてクルマを買った人が任意保険に加入する場合、等級は「6等級」となり、無事故(保険を使わない状態)で1年間過ごすと、翌年は「7等級」へとアップします。こうして無事故を続けることで、等級はランクアップし、もっとも割引が受けられる上限の20等級まで“出世”することができます。
しかし事故を起こし保険を使うと、等級は下がってしまいます。そのダウン幅は、事故の内容によって1〜3等級です(一部の特約など、保険を使っても等級が下がらない「ノーカウント事故」もあります)。しかも同じ等級でも、7等級以上は「事故あり」と「事故なし」で割引率が異なります。
たとえば14等級の人の割引率は「52%」(割引率、割増率は、損害保険料率算出機構の自動車保険参考純率より、以下同)ですが、事故で保険を使い3等級ダウンすると、翌年は11等級になります。この11等級の事故ありの割引率は「20%」で、33ポイントも変わってしまうのです。
しかも事故あり等級は、3等級ダウンの場合3年間継続するため、こうして生まれた差額は年々積み重なり、トータルの保険料支払い額では大きな差額となってしまいます。
等級が低い人では、もっと極端になる例もあります。4等級の割増率は「7%」ですが、ここで事故を起こし3等級下がった1等級になると、割増率は「108%」になります。その差は101ポイント、単純計算では「倍増」です。
なお、実際の保険料は車両型式ごとの保険データなどで毎年見直す「型式別料率クラス」によっても左右されるため単純計算は困難です。
こうした仕組みを考えると、「事故なし20等級」は、少なくともクルマを買ってから(任意保険に入ってから)14年目にならないと到達できない「最高峰」と言えるでしょう。そこに至らないまでも、12等級以上の「50%超の割引」となる等級が、クルマをいったん手放してしまうことでリセットされ、つぎにクルマを買うときにまた「6等級からスタート」だとしたら、あまりにも残酷です。
そこで自動車保険を扱う損害保険会社各社は、クルマの所有に「空白期間」があっても、従来の等級を受け継ぐことができる仕組みを用意しています。それが「中断制度」による等級の引継ぎです。
クルマを手放しても等級は10年キープ! 「中断制度」とは
この制度を利用すると、本人がクルマを持たない期間を挟んでクルマを買い直したときも、従来の等級を引き継げるだけでなく、同居の家族にも等級を引き継ぐことができます。
中断証明書を発行できる条件は、クルマの廃車や譲渡、盗難などでクルマが手元になくなる場合のほか、海外渡航、妊娠など、物理的にクルマが運転できなくなるケースなどが想定されています。
そして中断証明書による等級の引継ぎは、原則として解約日または満期日から10年間有効(海外への渡航の場合は出国日より10年間有効)です。
先に述べたように、割引率の大きな等級は安全運転により得たメリットであり、保険料の支払い額という“実利”を考えても、クルマを手放すときにその等級も放棄することはもったいない行為です。そして中断証明書が有効な10年という期間は、生活環境や家族構成が変化するには十分な時間です。
もうクルマを買い直す予定がないと思っていても、仕事の都合で地方都市に引っ越す、運転する同居の家族が増えるなど、この期間内にあらためてクルマが必要になる可能性はあります。解約や満期に際し、中断証明書を申請し、手元に置いておくことは、保険料の出費を抑えるという意味で、いわば「もうひとつの保険」と言えるでしょう。
なお中断証明書は自動的には発行されないので、保険の解約または満期の際に保険会社もしくは保険代理店に中断証明書の発行の申し出が必要です。
発行可能な期間は保険会社によって異なり、たとえば東京海上日動、三井住友海上では「契約の解約日または満期日から5年以内」、損保ジャパンでは「契約の解約日または満期日の翌日から起算して13か月以内」などとなっています。
ただ発行の申請には、保険証券番号や契約者の個人情報が必要となることから、解約時、もしくは満期時に済ませるほうがスムーズです。忘れずに手続きしておきましょう。