大量に増備されているN700系新幹線。N700系をN700Sで置き換えていることから、新幹線最大勢力に成長する勢いですが、その中でもオンリーワンの個性を発揮しているのが、西九州新幹線用のN700S 8000番台です。普通のN700Sと何が違うのでしょうか。
どこから見ても「かもめ」と分かる
N700S新幹線は2020年から製造されている東海道・山陽新幹線の最新モデルです。
JR東海が「標準車両」として設計したことで、4ユニット16両編成を3ユニット12両などに短縮することも容易とし、山陽新幹線・九州新幹線への対応や海外輸出も視野に入れた形式といえます。2025年10月現在で974両(試作車含む)の大所帯に成長していますが、既存のN700系をN700Sで置き換えているため、近い将来には歴代新幹線最大勢力になる可能性もあります。
それほどポピュラーとなったN700Sですが、わずか5編成30両の「オンリーワン」なモデルが存在します。JR九州の西九州新幹線用N700S 8000番台です。
通称「かもめ」は武雄温泉~長崎間の短い距離を走るため、数を必要としないJR九州は、良くも悪くも「無難」なN700Sを「九州らしいオンリーワン」の車両としてリデザインしたのです。
デザイナーはJR九州を中心に、国内鉄道車両の多くを手掛ける水戸岡鋭治氏。800系新幹線のようなオリジナルの前頭部形状は採用していませんが、コクピット部分を黒とし、ライトも縁取ることで印象を大きく変えています。色調も800系と同じく白と赤という、JR九州のコーポネートカラーかつ、和の組み合わせです。
なお「どの角度で写真を撮っても『かもめ』『KAMOME』のロゴが写るように意識されている」ところは、記念撮影の被写体としての車両に配慮した水戸岡氏らしいデザインといえます。
車内については、1~3号車が2+2列の指定席。4~6号車が2+3列の自由席です。座席は800系1000番台をベースとした木材を多用したデザインですが、コンセントが追加されているのが改良点です。座り心地については、800系1000番台と大差ありません。背もたれがやや直線的であることと、肘掛けの幅が狭いこと、また自由席には備わる背面テーブルが備わらないことは好みが分かれると思われます。
座席の増加は「リレーかもめ」が関係?
1号車はグレーの「菊大柄」、2号車はグリーンの「獅子柄」、3号車はベージュの「唐草模様」と変化しているところはデザインのJR九州らしさです。
4~6号車の自由席は、座席はN700Sと同じ2+3列座席ですが、シートモケットをイエローに変更。床の模様も変えています。座席は、N700Sの普通席と同じで、背もたれの上縁が体の重量を分散させにくい形状であること以外は、よくできています。編成定員は391人で、800系1000番台の384人より増えています。逆に、自由席を2+3列にしなかったら、定員がかなり減ったものと考えられます。
在来線特急「リレーかもめ」との連携を考えるなら、定員減少は許容できなかったのでしょう。
なお、東海道・山陽新幹線のN700Sでは見られませんが、「かもめ」には座席に2列分の荷物スペースが備えられています。しかし、車端部の特大荷物スペースは、他のN700Sと同様となっています
他の新幹線と接続していないため、営業用車両ですがY1編成とY3編成に軌道検測機器を、Y2編成に架線検測機器を搭載しています。ただし、車体傾斜装置は省略されています。
車両全体としては、「水戸岡デザイン」の中では落ち着いた雰囲気を感じますが、N700Sとしては「個性あふれるオンリーワン」なところが大きな特徴といえます。
今後、山陽・九州新幹線用のN700系はN700Sに置き換えられていくものと考えられます。本家ともいえる東海道新幹線では個室が設置されるなど、進化しており、置き換えの過程でさらに個性あるN700Sが誕生するかもしれません。