普通乗用車では半数以上がハイブリッド車となっていますが、新車販売の約4割を占める軽自動車には、モーター主体の走行が可能な“フルハイブリッド車”が存在しません。どういった事情があるのでしょうか。
そもそも軽に「ガチのハイブリッド」は必要なのか?
日本市場において、普通自動車では半数以上のシェアを誇るハイブリッド(HV)車。その多くがモーターを主体とした走行が可能な、いわゆる「フルハイブリッド」モデルとなっています。一方、日本で販売される新車の約4割は軽自動車ですが、軽にはこうしたフルHVモデルが存在しません。なぜなのでしょうか。
軽自動車は日本独自の規格で、取り回しの良さのほか、価格や維持費、税金の安さなど経済性の高さが長所です。しかし現状、軽モデルに“ハイブリッド”の名称を使っているメーカーはスズキのみであり、そのシステムも小型モーターで走行などをアシストするのみで、モーター単体では走れない「マイルドハイブリッド」(以下、マイルドHV)方式となっています。
「軽がフルHVになれば、もっと燃費が良くなって維持費が安くなるのでは」という声も聞こえてきそうですが、実は長年、軽自動車にフルHVのパワートレインを搭載すると、一般的に「軽のメリットが生かせなくなる」と考えられてきました。
理由はいくつかあります。ひとつはフルHVシステムのコストの高さです。フルHV車のシステムには高スペックなバッテリーやモーターが不可欠ですが、これらは現状では非常にハイコストであり、ガソリン車やマイルドHV車並みの低価格を実現するのが難しくなります。
また、システム自体の大きさも問題となります。軽自動車は車体寸法が規格で決められており、サイズは普通車よりはるかにコンパクトです。そこに大型バッテリーやモーターを搭載するのは、車両設計の面でも至難の業なのです。
そもそも、軽自動車が低燃費を実現できるのは、小型で軽量という車両特性があってこそ。大型で高スペックかつ、重いフルHVシステムを軽に積んでも、得られる恩恵は普通車のフルHV化よりも小さいでしょう。仮に純エンジンやマイルドHVのモデルより良い燃費性能を実現できたとしても、トータルのコストで優位性を生み出すのは難しいのです。
近い将来「フルハイブリッドの軽」が登場する!?
これまで本格的なフルHVの軽自動車が登場しなかったのは、両者がお互いの長所を潰しあってしまう関係にあったからだといえます。
しかし近い将来、フルHVシステム搭載の軽モデルが市販されるかもしれません。ダイハツは昨年2025年の「ジャパンモビリティショー」に、「e-SMART HYBRID」という軽自動車用のフルHVパワートレインを出展しました。
このシステムではエンジンが発電を担当し、駆動をモーターでまかなうシリーズハイブリッド式と呼ばれるタイプのものです。シリーズ式は、エンジンとモーターを併用するパラレル式や、モーター(またはエンジン)単体でも走行可能なシリーズ・パラレル式に比べるとシンプルな構造で、スペースやコスト面の制約が大きい軽自動車にも適したフルHVシステムといえます。
このフルHVシステムを搭載したモデルが市販化されれば、軽自動車でも登録車と同様、フルHV車が選べるようになります。現状では克服すべき課題も多い軽自動車のフルHV化ですが、筆者(西川昇吾:モータージャーナリスト)としても今後に期待したいところです。