これまで空対空戦闘で一度も撃墜されたことがないF-15E戦闘攻撃機が2026年3月、同盟国の戦闘機の誤射により、3機同時に撃墜されたのです。ハイテク装備満載のなか、なぜこれほど大規模な同士討ちが起きてしまったのでしょうか。
F/A-18「ホーネット」がF-15E「ストライクイーグル」を撃墜!?
2026年2月28日以降に展開された対イラン航空作戦は、現代航空戦における一方的優勢の典型例として記録されることになるでしょう。
アメリカおよびイスラエルの航空戦力は、電子戦能力、ステルス性、精密誘導兵器を高度に統合し組み合わせて用いることで、イラン側の防空網を短時間のうちに無力化しました。その結果、反撃は限定的な水準に抑え込まれ、攻撃側の損耗は極めて低く抑えつつ作戦を継続するという、近年稀に見る非対称的な戦場環境を成立させています。
しかし、この均衡を内側から崩壊させるかのような衝撃的事案が、3月2日に明らかとなりました。アメリカ空軍の戦闘攻撃機F-15E「ストライクイーグル」が3機同時に撃墜されたのです。さらに深刻なのは、これを撃墜したのが敵ではなく、同盟国であるクウェート空軍の戦闘機F/A-18「ホーネット」であった点です。
同士討ち、いわゆる「ブルー・オン・ブルー」は、近代航空戦において最も忌避される事象のひとつです。しかも本件は単発的な誤射ではなく、3機同時撃墜という極めて異例の規模です。
状況証拠から推察すれば、使用されたのは中距離空対空ミサイルAIM-120「AMRAAM」であり、その多目標同時交戦能力を活用した一斉射撃が実施された可能性があります。
なぜ、このような事態が発生したのでしょうか。そもそも、現代の戦闘機は誤射防止のため、多複合的な識別システムを備えています。中核をなすのはIFF(敵味方識別装置)です。これは、暗号化された応答信号の照合によって友軍識別を行う仕組みです。
理論上、これは誤認の可能性を極小化します。また、近年ではデータリンクによる戦術ネットワークが不可欠となっており、リンク16に代表されるリアルタイムの通信システムを用いて、作戦空域の状況はほぼ瞬時にリアルタイムで共有されます。これにより、パイロットの状況認識は従来の視覚情報に依存せず、統合されたデジタル戦場像に基づくものへと転換しています。
IFFも戦術ネットワークも万全ではない
それにもかかわらず誤射が生起する背景には、看過し得ない構造的な脆弱性が存在します。第一に、IFFは決して万能ではないという点です。設定不一致、機器故障、あるいは何らかの理由により、応答が得られない状況は現実に起こり得ます。
この場合、対象は「敵」と断定されるのではなく、本来は「未確認機」として扱われるべきですが、実戦環境下ではその区別が致命的に曖昧化する可能性があります。
第二に、戦術ネットワークもまた完全なものではありません。情報更新の遅延や通信の断絶によって、表示される状況図は現実と乖離し得ます。高度にネットワーク化された戦場は、同時に情報の信頼性に依存する脆弱性も内包しているとも言えるでしょう。
そして決定的なのは、ミサイル自体が敵味方の識別能力を持たないという点にあります。AIM-120「AMRAAM」はアクティブレーダー誘導により目標を追尾しますが、その識別は発射母機の判断に全面的に依存します。一度発射されれば、途中での介入は極めて限定的であり、誤認はそのまま悲劇的な結果へと直結します。
さらに空対空戦闘は、しばしば音速に迫る速度域で遂行されます。こうした速度では、わずか1秒の判断遅延が致命的な結果を招きかねず、パイロットには極限的な即応判断が要求されます。時間的圧迫と情報の不確実性が交錯する中で、誤認のリスクは構造的に内在しているのだと言えます。
本件の具体的な原因は現時点で明らかではありません。様々な原因が複合的に生じた結果、敵機と誤認した可能性もあり得ます。そして視程外戦闘が主流となった現代において、目視確認という古典的な「安全弁」はもはや実効性を持ちません。
過去、空対空戦闘において一度も撃墜されたことがなく「不敗」の象徴とされてきたF-15が、敵ではなく味方の火力によって3機も失われたという事実は、現代航空戦の本質的な難題を端的に示しています。
これは、すなわち技術の高度化が必ずしも「識別」の確実性を保証するものではないという現実であり、敵味方識別という根源的課題が依然として未解決のまま残されていることを意味しているのです。