【イスタンブール時事】イランでは米国との戦闘や外交交渉を巡り、精鋭軍事組織「革命防衛隊」の主導権が一段と強まっているとみられる。ホルムズ海峡の「開放」から封鎖に転じた事態でも、反米強硬を掲げる革命防衛隊の強い意向が働いたとされる。屈服を拒む「軍事国家」として強硬化に拍車が掛かり、譲歩が困難になっている可能性もある。
イランのアラグチ外相は17日、停戦期間中の条件付きながらホルムズ海峡の「完全開放」を表明。しかし、翌18日に革命防衛隊は海峡封鎖を宣言し、インド船籍2隻への攻撃も伝えられた。
駐日大使も務めたアラグチ氏は外交交渉の経験が豊富で、対外的な融和を志向する穏健派。今回の発表直後から反米保守強硬派の猛反発を浴び、保守系メディアも「多くの批判と臆測を招いた」(タスニム通信)と非難した。一部国会議員は外相罷免も求めた。
米紙ウォール・ストリート・ジャーナルはイラン外交筋の話として、アラグチ氏の発表は「停戦期間が残り少ない中で妥協の姿勢を示す試みだった」と報道。だが、革命防衛隊と事前調整を怠ったため、怒りを買ったという。先月7日にも穏健派のペゼシュキアン大統領が周辺諸国への報復攻撃を謝罪したものの、革命防衛隊などから「弱腰」との批判を浴びたとされる。
イランは米イスラエルの攻撃で体制指導部の要人を次々と失い、指揮命令系統の混乱も懸念された。徹底抗戦を貫き体制が動揺する兆候は見られないが、今後の方針に関して強硬派と穏健派の溝も深まっているもようだ。
米シンクタンク戦争研究所は18日付で、イランでは革命防衛隊のバヒディ司令官、軍中央司令部のアブドラヒ司令官、革命防衛隊出身のゾルガドル最高安全保障委員会事務局長らの影響力が増し、「バヒディ氏や側近らが軍事作戦だけでなく交渉プロセスも事実上掌握した可能性がある」と指摘した。外交交渉は本来は政治指導者が担ってきたが、「革命防衛隊がこれほど外交や交渉に直接関与したことはなかった」として、パキスタンで開かれた対米協議代表団を率いたガリバフ国会議長やアラグチ氏には「取引をまとめる完全な権限は与えられていない」と分析している。
〔写真説明〕イランの精鋭軍事組織「革命防衛隊」のバヒディ司令官=2024年5月、テヘラン(AFP時事)
〔写真説明〕イランのアラグチ外相=2月17日、ジュネーブ(AFP時事)