「居眠り運転」や「過労運転」については、罰則規定について様々な情報が飛び交うことがあります。実際に法的な定義などについてはどうなっているのか、弁護士に解説してもらいました。
法律に「居眠り運転」の文字がなくとも、罰則はある
俗に言う「居眠り運転」による重大事故は過去に何度も発生しています。しかし、ネット上では「『居眠り運転』そのものには罰則規定がない一方、『居眠り運転』を含む『過労運転』には厳しい罰則規定がある」といった、ややこしく、そして真偽が不確かな情報が散見され、多くのドライバーを混乱させているようにも思います。
果たして「居眠り運転」「過労運転」双方の、法的な定義の違いと、厳しい罰則などについて、正確にはどうなっているのでしょうか。アディーレ法律事務所に所属する南澤毅吾弁護士に聞きました。
冒頭で触れた「居眠り運転」「過労運転」双方の、法的な定義の違いについて、南澤弁護士はこう解説します。
「『過労運転』とは、疲労や病気などの影響で『正常な運転ができないおそれがある状態』での運転を意味します。『過労運転』は道路交通法第66条で禁止されていて、実際に危険かどうか、事故を起こしてしまったかどうかを問わず、運転をしているだけで罰則対象となります。
これに対して『居眠り運転』は、あくまで日常用語であり、法律上の定義はありません。法律に定義されていないことが、『罰則がない』『合法だ』と誤解する人のいる原因だと考えられます。
しかし、当たり前ですが、法律に『居眠り運転』の文字がないからといって、罰則がないということにはなりません。居眠りしてしまうくらいの疲労状態であれば、『居眠り運転』は『過労運転』に該当しますし、寝てしまっている状態で運転しているわけですから前方不注意として『安全運転義務違反』に当たる可能性もあります」(南澤弁護士)
弁護士から見た「居眠り運転」「過労運転」の危険性
また南澤弁護士は、数ある道路交通法の罰則規定の中でも「居眠り運転」を含む「過労運転」が厳しく罰せられる理由についても解説してくれました。
「過労運転が厳しく規制されている理由は、ドライバーの判断力・注意力・反応速度が著しく低下し、重大事故に直結する危険性が極めて高いためです。
特に疲労や眠気は、自覚がないまま進行することも多く、『気づいたときには事故が起きている』という性質があります。そのため、事故の有無に関わらず、危険な状態での運転自体を禁止する必要があるのです。
実際に、過労運転による事故は重大事故(死亡事故や多重事故)につながりやすく、社会的影響も大きいことから、他の違反と比較しても重い処罰が設けられています」(南澤弁護士)
具体的な罰則は、過労運転(道路交通法66条違反)の場合、3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科される可能性があるといいます。
さらに、過労状態で事故を起こした場合には、過失運転致死傷罪などが成立し、より重い刑事責任を問われることもあり、数ある道路交通法の罰則の中でもかなり厳しいものだといわれています。
南澤弁護士は「居眠り運転」を含む「過労運転」が厳しく罰せられるのは当然のこととしながらも、多くのドライバーに対しこんな助言もくれました。
「交通事故の中には、意図的な危険運転や暴走もありますが、大半は判断力の低下、不注意に起因します。『疲れているから運転を控えよう』というドライバーの意識があるだけで、多くの交通事故が予防できることは間違いありません。
交通事故は起きてしまってからでは取り返しが付きません。被害者の方に対しての罪を背負うことはもちろん、実名報道によって、社会的な立場を失う場合すらあります。
ドライバー1人1人が、『居眠り運転』『過労運転』それ自体が違法である、という認識を持つことが重要だと思います」(南澤弁護士)