中東情勢の緊迫化による原油高を受け、日銀がインフレ圧力に警戒感を強めている。10日発表した3月の国内企業物価指数(速報値、2020年平均=100)は129.5と、前年同月比2.6%上昇した。企業物価が上がれば事業者の仕入れコストが増大し、消費者物価に波及する。物価抑制のために利上げを行えば景気が冷え込むリスクもあり、日銀は難しい判断を迫られている。
3月の指数は前月比でも0.8%上昇し、上げ幅は2月から0.7ポイント拡大した。ガソリンや軽油といった「石油・石炭製品」が7.7%、プラスチックや合成ゴムの原料ベンゼンなどの「化学製品」も1.7%上昇。ホルムズ海峡の事実上の封鎖による原油高や、石油製品ナフサの供給懸念が背景にある。
イランと米国は2週間の一時停戦で合意したものの、イスラエルがレバノンの親イラン勢力への攻撃を継続するなど、先行きの不透明感は根強い。SMBC日興証券の佐藤雄一郎エコノミストは「原油の安定供給にはまだ時間がかかるとみられ、引き続き物価上振れのリスクはくすぶっている」と指摘する。
日銀は金融政策運営で、一時的な変動要因を除いた基調的な物価上昇率を重視する考えだ。産業の「川上」に当たる素材価格の上昇は、幅広い最終製品の値上がりにつながる。日銀は、企業の価格改定の動きが積極化していることなどから、「過去と比べてコストの価格転嫁が進みやすくなっている」(幹部)と分析。原油高が引き金となり、基調物価の上振れを招かないか注視している。
日銀は経済・物価情勢の改善に応じ、今後も利上げを続ける方針。ただ足元では、原油高の影響で企業収益が悪化し、賃上げの機運に冷や水を浴びせる懸念もある。今月27、28両日の金融政策決定会合では、中東情勢の先行きを慎重に見極めた上で、追加利上げの是非を議論するとみられる。