アメリカ軍がイランの地下兵器庫に対し、戦闘機搭載用としては世界最大級となる2.3tの巨大貫通爆弾を実戦投入しました。強固なコンクリートや岩盤を突き破り、地中深くを粉砕する恐るべき破壊兵器のメカニズムと誕生の歴史をひも解きます。
運用可能な戦闘機はF-15「イーグル」だけ
古くから「地下」という領域は、軍事的に極めて堅牢で隠ぺいが容易な空間として重宝されています。高価値な兵器や司令部を収容するのに適した聖域であり、これを無力化するのは極めて困難であり続けています。
しかし強固な盾が現れれば、それを打ち破ろうとする矛が発達するように、地下陣地の破壊を目的とした兵器も誕生しています。通称「バンカーバスター」と呼ばれる貫通爆弾がそれです。
2026年3月18日、アメリカ軍はイラン爆撃作戦「エピック・フューリー」において戦闘機搭載としては世界最大級となる5000ポンド(約2.3t)の巨大「バンカーバスター」を実戦に使用したと発表しました。
現在、ホルムズ海峡はイランによって封鎖状態にあり、世界的な石油価格の上昇を招いています。その根源が地対艦ミサイルの存在であり、アメリカは「バンカーバスター」を用いて、その地下兵器庫を破壊した模様です。
使用された5000ポンド爆弾とは、恐らく新型のGBU-72「アドバンスト5Kペネトレーター」であると考えられます。この爆弾の設計思想の核心は、「爆発」ではなく「到達」にあります。
強靭な外殻と高密度の構造を持つ弾体は、戦闘機から投下されると音速に近い高運動エネルギーを維持したまま地表を貫き、コンクリート層や岩盤を突き破って地下深くに侵入します。そして目標内部、あるいはその至近で起爆することで、最大限の破壊効果を発揮します。いわば「地中に対する精密爆撃」であり、爆風や破片による表層破壊とは次元の異なる攻撃様式だと言えるでしょう。
従来の貫通爆弾BLU-109/Bが2000ポンド(約907kg)であるのに対し、GBU-72はその2.5倍に達する重量を有します。この質量の増大は貫通能力の飛躍的な向上を意味します。物理的には質量と速度の積である運動量が増大することで、同一材質の障壁に対してより深い侵入が可能となります。結果として、従来兵器では到達不可能であった地下施設に対しても、確実な打撃を加えることができるのです。
原点は湾岸戦争 さらに巨大な「最終兵器」も
しかし、この巨大な兵器を運用できるプラットフォームは極めて限定されます。現時点でGBU-72を搭載可能とされるのは、アメリカ空軍のF-15E「ストライクイーグル」戦闘爆撃機のみです。同機は、高いペイロード能力と堅牢な機体構造、さらに精密誘導兵器の運用に特化したアビオニクスを備えるため、戦闘機でありながら爆撃機に匹敵する打撃力を発揮します。GBU-72の運用は、この機体の持つ「戦闘機以上、爆撃機未満」という独自のポジションを象徴するものと言えるでしょう。
「バンカーバスター」の系譜を遡れば、その原点は1991年の湾岸戦争に行き着きます。当時、イラク軍が保有する強固な地下施設を破壊するため、急遽開発されたのが5000ポンド(2.3t)のGBU-28でした。
これは203mm榴弾砲の砲身を転用した鋼鉄製の弾体を持ち、F-111「アードバーク」戦闘爆撃機によって運用されました。GBU-28は、限られた時間のなかで実戦投入されたものの、地下施設に対する航空攻撃の有用性を全世界に見せつけることに成功し、地下陣地であっても安全でないことを明らかにしたのです。
このとき使用されたGBU-28は、土であれば約50m、強化コンクリートであっても5mを貫通できるとされており、GBU-72も恐らく同等以上の貫通力を保持していると考えられます。
ただ、それでもアメリカ空軍は満足しませんでした。GBU-72ですら力不足となる地下施設も存在すると考えた結果、さらに強力な「バンカーバスター」として、13.6tに達する超大型爆弾「MOP(Massive Ordnance Penetrator)」を開発・保有しています。
これはB-2戦略爆撃機によってのみ運用される「最終手段」に近い兵器であり、地中深くに構築された核関連施設や指揮中枢を破壊することを目的としています。
前出のGBU-72が戦術レベルの地下目標を担うのに対し、MOPは戦略レベルの「地下要塞」を対象とする存在であると言えるでしょう。