【ワシントン時事】トランプ米大統領は11日からの対イラン和平交渉にバンス副大統領を起用した。政権内でイラン攻撃に「反対」したと伝えられるバンス氏が、難航の予想される協議で外交手腕を発揮できるのか内外で注視されている。同氏は2028年大統領選でトランプ氏の後継候補の1人と目されており、交渉の行方が将来を占う試金石となりそうだ。
バンス氏は8日、訪問先のハンガリーで記者団に「イラン側にも多くの懸案があるだろうが、誠実に交渉し賢明な判断を下してくれると信じている」と述べ、合意成立に意欲を示した。
同氏は高校卒業後、海兵隊に入隊しイラクに駐留した経験を持つ。こうした経歴から外国への軍事介入には慎重な立場で、ニューヨーク・タイムズ紙は、トランプ氏が対イラン軍事作戦を決断する直前までバンス氏が懸念を示していたと報じた。停戦合意では仲介国パキスタン側と協議を行い、トランプ氏にイラン側の提案受け入れを進言するなど「重要かつ中心的な役割を果たした」(レビット大統領報道官)。
パキスタンで行われる和平交渉には、イランからガリバフ国会議長らが出席する方向。イラン側は軍事作戦に後ろ向きなバンス氏との歩み寄りに期待を寄せているとみられるが、イランが提示した10項目ではレバノンへの攻撃やイランによるウラン濃縮を巡って主張の隔たりが露呈する。バンス氏は「交渉を破綻させるかどうかはイラン次第だ」とけん制しており、先行きは不透明だ。
対イラン作戦を巡っては、トランプ氏の熱狂的支持層で外国介入を嫌う「MAGA(マガ)」派に影響力を持つ元保守系テレビ司会者タッカー・カールソン氏らが「トランプ氏に反対と言うべきだ」などと反発している。バンス氏はMAGA派から一定の支持を得るものの、交渉が決裂し再び戦闘に突入すれば求心力の低下を招きかねない。一方で、譲歩をしたと受け取られれば政権内の立場が危うくなる可能性がある。
米メディアによると、トランプ氏は今月のホワイトハウスでの昼食会で、バンス氏に「大きなディールだ。実現しなかったらバンスのせいにするからな」と語った。
〔写真説明〕バンス米副大統領=8日、ブダペスト(EPA時事)