停戦合意、破綻の危機=レバノン攻撃で溝深まる―米イラン交渉も暗雲

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 【ワシントン、カイロ時事】米国とイランによる2週間の停戦合意は、早くも破綻の危機を迎えている。イスラエル軍がレバノンへの攻撃を継続し、イラン側は「合意違反だ」と猛反発。パキスタンで11日に予定されている対米交渉に応じない構えを見せ、要衝ホルムズ海峡を再封鎖したとの報道もある。
 ◇「停戦か継戦か」
 イスラエル軍は8日、レバノン首都ベイルートなどに「開戦以来、最大規模」(同軍)の空爆を行った。10分間でイスラム教シーア派組織ヒズボラの拠点100カ所以上を攻撃。現地からの映像によると、市街地で大きな黒煙が立ち上り、一部の建物が崩壊。レバノン当局は、少なくとも254人が死亡したと発表した。
 米イランを仲介するパキスタンのシャリフ首相は、停戦合意について「レバノンを含むあらゆる地域」に適用されると明確にしている。国連のグテレス事務総長も8日、イスラエルの軍事行動を非難した。
 これに対し、イスラエルのネタニヤフ首相は停戦の対象に「レバノンは含まれない」と強弁する。トランプ米大統領はメディアに同様の認識を示し、足並みをそろえた。
 ヒズボラを支援するイランのガリバフ国会議長はX(旧ツイッター)への投稿で、イスラエルのレバノン攻撃は「合意破りだ」と断罪。アラグチ外相も「米国は停戦か継戦か選択を迫られている」と警告した。
 ◇ウラン濃縮で対立
 米イラン間の溝を一段と深めているのは、イランの核開発を巡る立場の違いだ。
 「ウラン濃縮は行われない」。トランプ氏は8日朝、SNSに改めて投稿し、イランの核兵器保有につながる濃縮活動を認めないと明言した。イラン側は、11日に予定する対米交渉の土台として提示した10項目の条件に濃縮活動の容認が含まれていると主張している。
 核拡散防止条約(NPT)に加盟するイランはこれまで、条約で認められた「核の平和利用の権利」を訴え、濃縮停止を強く拒否してきた。しかし対イラン交渉団を率いるバンス米副大統領は8日、記者団に、濃縮停止をレッドライン(譲れない一線)とするトランプ政権の立場に「変更はない」と強調した。
 停戦合意の脆弱(ぜいじゃく)性が浮き彫りになる中、ガリバフ氏は「停戦や交渉は現実的ではない」と指摘し、対米交渉の行方は一段と不透明感を増している。イランの国営英語放送局プレスTVは、ホルムズ海峡通航を試みた石油タンカーがペルシャ湾に引き返しており、海峡が封鎖されたと報じた。
 レビット米大統領報道官は、イランがレバノン攻撃に対抗してホルムズ海峡を再封鎖したとの報道について「虚偽だ」と否定する。米イランの応酬は激化の一途をたどっている。 
〔写真説明〕写真左からイランのガリバフ国会議長、イスラエルのネタニヤフ首相、トランプ米大統領(AFP時事)