【イスタンブール時事】イランは米国との戦闘終結に向けた交渉開始で合意したことを受け、国内外へ「勝利」を誇示している。ただ、トランプ米大統領が警告した発電所など主要インフラへの攻撃は体制を揺るがす壊滅的打撃となりかねず、一時的に停戦に応ぜざるを得なかった側面もあるとみられる。あくまで「防衛戦の停止」と面目を保ちつつ、強硬姿勢は貫いており、交渉で事態が沈静化するかは不透明だ。
「勇敢な国民が敵を歴史的な無力と永続的な敗北へ追い込んだ」。イランで国防や外交を統括する最高安全保障委員会は8日、交戦で優勢なのはイランや親イラン勢力だと主張した。精鋭軍事組織「革命防衛隊」とつながるタスニム通信も8日、「敵は体制転覆という最も重要な戦略目標を達成できなかった」と伝えた。
イランは軍事的に圧倒的な差がある米イスラエルの攻撃に対抗し、湾岸の周辺諸国へ弾道ミサイルや無人機を多数発射。原油輸送の要衝ホルムズ海峡も事実上封鎖し、世界経済を混乱に陥れる「非対称戦」を駆使した。いずれもトランプ政権やイスラエルが予想しなかった報復措置で、最高安全保障委は「敵は1カ月以上もイランに猛攻を停止するよう懇願してきた」と反撃の戦果を強調している。
一方、2週間と期限を区切った対米交渉が順調に進むかは予断を許さない。イランのメディアによると、イラン側はホルムズ海峡の新たな通航協定や全面賠償、制裁解除、ウラン濃縮の権利容認など10項目を主張。米国が先に提示した15項目には拒否を明言した。かたくなに交渉の主導権を握ろうとすれば、米国との議論が行き詰まる可能性も排除できない。
イランは徹底抗戦を掲げて降伏を拒む革命防衛隊が実質的に国政を担い、「軍事国家」の性格を強めている。米国に対し、昨年6月と今回の2度も交渉中に先制攻撃された屈辱と不信感を抱えるだけに、「われわれは引き金に手をかけており、敵が少しでも過ちを犯せば力で対応する」(最高安全保障委)と警戒感をあらわにしている。