商船三井グループが発注した日本初となる内航モジュール船が、2026年中に運航を開始します。船首のブリッジ部を除き、異様に低く、平べったく造られた甲板を持つこの船は、どう使われるのでしょうか。
日本初の「内航」モジュール船
大手船社・商船三井グループが発注した日本初となる「内航モジュール船」が2026年中に運航を始めます。建造は中国の泰州三福重工集団で行われ、夏までには船籍港となる長崎港(長崎市)に到着し、国内運航に向けたトライアルなどを行う予定です。
その姿は、一般的なRORO船の数デッキ分をあえて排除したような、異様に低くフラットな甲板が特徴です。どのように使われるのでしょうか。
モジュール船とは、その名の通り石油化学プラントなどに据え付ける大型設備のモジュールを、製造場所のヤードから建設地まで組み立てた状態で運ぶために設計された特殊な重量物運搬船です。船首側にブリッジや居住区など運航に必要な機能を集約させ、その後ろに乾舷を非常に低くした、フラットで広大な甲板を設けています。
クレーンは備わりませんが、岸壁が低い港でも着岸できるため、大型車などが自走して船に乗り降りするロールオン・ロールオフ(RORO)方式での荷役が可能です。これにより、何百トンとある重量物でも、貨物の下にSPMT(自走式多軸台車)を置いて、そのまま積み込むことができます。
近年では、再生可能エネルギーとして期待が高まっている洋上風力発電所を構成するブレードや浮体基礎などの輸送にも活用されています。
邦船社でも日本郵船グループのNYKバルク・プロジェクトが1万4538総トン級の大型モジュール船「YAMATAI(邪馬台)」と「YAMATO(大和)」を運用しており、台湾での洋上風力発電プロジェクトなどで活用されています。ただ、両船ともにパナマ船籍の外航船であるため、国内の港から港へ貨物を運ぶ内航輸送に使うことはできません。
これに対し商船三井グループの新造モジュール船は、製造から建設まで日本国内で完結するプロジェクトに投入することを想定し、日本船籍船として建造されました。総トン数は9900トン、載貨重量は1万3000トンで、カーゴデッキは3900平方メートルの広さを確保しています。管理は商船三井ドライバルクが、運航は商船三井内航が手掛けます。船名は、公開された模型の船体に「WIND WHALE」と書かれていました。
同船は総トン数を1万トン未満に抑えることで、来島海峡や関門海峡などの特定水域で義務付けられている強制水先(パイロットの乗船義務)を回避し、運航コストを抑制。同時に、柔軟なルート選択を可能にしました。
また、全長が200mを超えると巨大船として扱われ、航行の規制や警戒船の手配などが必要になるため、船体サイズを全長約149m、全幅約30mに抑えています。
「旅客機より巨大なモノ」を3本積む!
商船三井ドライバルクの担当者は今回の新造船について、「モジュール船のサイズとしては世界的に見ると決して大きい船ではないが、日本の小さい港にフィットさせた中でも大きめの船型だ」と説明します。
最初に投入されるのは、秋田県の男鹿市、潟上市、秋田市沖で行われる洋上風力発電事業です。JFEエンジニアリングの笠岡モノパイル製作所(岡山県笠岡市)で製造された、風車とタワーを海中で支えるモノパイル式基礎構造物を輸送します。
「1本あたり1500トンから2000トンくらいあるようなものを3本積んで笠岡から秋田に持っていく。モノパイルは直径が10m、長さが 80mで、旅客機よりも大きい。そういったサイズのものを船尾からSPMTに乗せて岸壁からデッキにそのまま積むことになる」(商船三井ドライバルクの担当者)
さらに、運んで来た構造物を、洋上風力発電所の建設を行うSEP船(自己昇降式作業台船)へ直接渡すことも想定し、DPS(自動船位保持装置、ダイナミックポジショニングシステム)も搭載しました。これは船位・船首方向を自動的に制御するためのコンピューター制御システムで、オペレーターが設定した船速で指定した経路に沿って航行したり、ROV(遠隔操作型無人潜水機)のような指定した対象物に一定の距離を保ちながら追尾したりすることができます。
新造モジュール船は船首側にバウスラスターが2基、船尾側に360度回転のアジマススラスターが2基備わっており、これにより本船自体が前後左右、自由に移動できるようになっています。ジョイスティックを用いた手動での制御にも対応しており、タグボートの支援が無くても入出港を行えます。
商船三井グループでは今後、国内洋上風力案件の需要増を見込んでいるほか、アジア近海での運航も考え、2隻目の建造も検討しています。