旧姓単記、実現に「懸念」=システム改修費など課題山積―夫婦別姓、賛否両派から疑問も

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 結婚に伴い改姓した人の旧姓使用拡大に向け、政府は旧姓だけを公的書類に記載する「旧姓単記」を可能とする法整備を目指している。旧姓使用による不便を解消できるとしているが、戸籍姓と一致しない公的書類ができることによる混乱を懸念する声も上がる。専門家は「夫婦別姓制度の推進・慎重両派が疑問を呈しており、意義が見えにくい」と話している。
 旧姓単記は、高市早苗首相が2月の第2次内閣発足に当たり、関係閣僚に検討を指示。政府は3月に閣議決定した第6次男女共同参画基本計画に法整備検討を明記し、自民党も2026年運動方針案に記載した。
 ただ、具体的にどの書類で旧姓単記を可能にするかは、今のところ示されていない。運転免許証やパスポートなど、厳格な本人確認が必要なものは現行通り戸籍姓との併記にする方向とされる。
 選択的夫婦別姓の実現を求める一般社団法人「あすには」(東京)の井田奈穂代表理事は「旧姓併記でもトラブルが多い」と指摘。「旧姓単記が加われば、企業や自治体の対応は煩雑になり、システム改修費もかさむだろう」と語る。
 別姓推進派は望まない改姓は自分らしさや人格権の否定に当たる人権侵害だと訴えており、「旧姓単記ができるようになっても別姓導入のニーズはなくならない」という井田氏。結婚で改姓するのは女性が大半だとして、「旧姓使用の法制化は別姓導入を先送りし、女性差別を固定化させかねない」と批判する。
 一方、保守系の民間シンクタンク「日本政策研究センター」の小坂実研究部長は「公的身分証明書に旧姓単記が可能になると戸籍の形骸化を招き、それを前提とした社会が混乱する」と慎重な姿勢だ。
 戸籍姓と結び付かない身分証明書では、本人確認に時間がかかる上、悪用の恐れもあり「社会の利便性が増すとは考えにくい」と強調。旧姓単記案が出てきた背景について「与党内にいる別姓推進派への配慮ではないか」と推測する。
 家族や婚姻を巡る問題に詳しい慶応大の阪井裕一郎准教授(社会学)は、旧姓単記について「運用面で課題が多く、実現は容易でない」と語る。多大なシステム改修費などは別姓推進、慎重派のどちらからも理解が得られないとして、「議論を旧姓使用の不便さに矮小(わいしょう)化せず、世界で日本にしかない同姓制度をなぜ維持するのか問い続ける必要がある」と話している。