日英伊による次期戦闘機開発プログラム「GCAP」の司令塔である国際機関GIGOが、開発主体のエッジウィングと初の契約を締結しました。約1450億円にのぼる契約の全容と、国際共同開発が抱える懸念点を深掘りします。
GIGOとエッジウィングが契約を締結。これまでと何が違う?
日本のF-2と英伊両国のユーロファイター「タイフーン」、両戦闘機の後継を開発するための「グローバル戦闘航空プログラム」、いわゆる「GCAP」をめぐり、日英伊3か国による国際政府機関GIGOは2026年4月1日、3か国の合弁会社エッジウィングと初契約を締結しました。契約額は6億8600万ポンド(約1450億円)です。
GIGO(GCAP International Government Organisation)とは、日英伊の政府や企業との協業を一元的に管理・運営するための「司令塔」となる組織で、2023年12月に3か国の防衛大臣が設立条約に署名して発足、各国から合計数百人が派遣されています。
一方、GIGOのカウンターパートであるエッジウィングは、GCAPの設計と開発を主導するため、2025年6月に設立された組織で、日本航空機産業強化(JAIEC:三菱重工業と日本航空宇宙工業会が共同出資)とイギリスのBAEシステムズ、イタリアのレオナルドが33.3%ずつ出資しています。
GIGOとエッジウィングは、双方ともイギリスのレディングに本部を置きます。前者のトップである首席行政官は防衛省の元防衛審議官である岡 真臣氏が、後者の最高経営責任者(CEO)はレオナルド出身のマルコ・ゾフ氏が務めています。
一見すると、今回の契約締結は単なる官民間の手続きに思えますが、GCAPの開発においては大きな意義を持つものになります。
2022年に始まったGCAPは、最先端技術を備えた次世代ステルス戦闘機を、日英伊3か国で共同開発する国際プロジェクトですが、スタート当初は3か国の防衛当局が、それぞれ自国の企業と契約を締結していました。日本では三菱重工業、イギリスではBAEシステムズ、イタリアではレオナルドが主契約会社となって、それぞれGCAPの開発を進めてきた経緯があります。
なぜ契約締結が遅れたのか? 懸念材料は?
しかし、国際共同開発を効率的に進めるため、2025年度以降、3か国が個別に自国企業と結んでいた契約を、GIGOとエッジウィング間での一元化な契約へと移行します。
日本では、2024年度から必要な資金をGIGOに拠出しているほか、2025年度の防衛省予算にも「令和7(2025)年度より、日英伊の3か国それぞれで実施していた機体およびエンジンの設計等の作業をGIGOの下に一元化し、3か国で緊密に連携して実施」すると記されています。
実は、今回のGIGOとエッジウィングの契約は元々、2025年末までに結ばれる計画でしたが、結果的に3か月近く遅れました。これは、イギリスの財政が逼迫し、防衛投資計画の策定が遅れたのが理由です。
さらに、この防衛投資計画の長期的な拠出額を確定できなかったため、今回の契約期間は暫定的な3か月間となっています。したがって、6月末までに年単位の長期契約への切り替えが必要となる見通しです。
ところで、戦闘機を含む軍用機の国際共同開発は一般的に、開発費や量産機の購入費を抑える効果が期待される一方で、参画国の国内事情に左右されやすいという側面を持ちます。開発の主導権や、ワークシェアをめぐる参画国間の対立といった懸念材料も内包しており、その意味では今回の契約締結の遅れは、懸念の1つが現実のものになったとも言えるでしょう。
これ以外にもGCAPに関しては、日英伊の3か国以外にも複数の国が参画を希望していることが、2035年の部隊配備を求めている日本にとっての懸念材料になっています。
開発遅延に向けた備えも必要?
GCAPへの参画を希望する国としては、サウジアラビアの名前が比較的知られていますが、最近ではFCAS(将来戦闘航空システム)でフランスと揉めているドイツや、アメリカとの関係が悪化しているカナダの名前も挙がるようになりました。このうち、カナダについてはオブザーバーで参画し、機体の購入を検討中と報じられています。
GCAPの開発は現在、日英伊の3か国間で機体の形状や重量とエンジン推力のトレード・オフ・スタディを実施し、機体の構想設計に反映させる取り組みや、実証用エンジン(XFP30)の詳細設計が進んでいます。そして、ようやく契約の一元化に至ったことで、これらGCAPの開発が加速することが期待されます。
なお、日本にとって懸念材料である新たな参画国ですが、現在のところ、GCAPの開発は日英伊のオリジナルメンバーで進めていく方針に変わりはないようです。
とはいえ、イギリスの国内事情によって最初の契約締結が遅れたことは、各国の国内事情によって全体の開発計画が遅延するという「国際共同開発の脆弱性」を改めて浮き彫りにしました。
前述したように、航空自衛隊への量産機配備の目標は2035年と、残された時間は限られています。
今後、イギリスやイタリアの事情でさらなる開発遅延の可能性がゼロではない以上、防衛省や航空自衛隊としては、最悪の事態に備えた「プランB」を検討しておく必要性があるのかもしれません。