中東地域の情報収集・分析に当たった経験を持つ日本総合研究所の寺島実郎会長は4日までに時事通信のインタビューに応じた。米国のイラン攻撃について「力の論理が横行する中、日本が取るべきスタンスと戦略をどう描くかが重要」と述べ、国連での多国間協調をてこに日本政府が早期停戦に主体的な役割を果たすよう訴えた。
―イラン攻撃が長期化しつつある。
端的に言えば「不必要かつ誤った戦争」だ。保守・右派のイスラエルのネタニヤフ政権が主導し、それに米国のトランプ政権が巻き込まれているという状況だ。現段階ではミサイルやドローンを利用した攻撃で米国に有利に展開しているように見えがちだが、地上戦になれば事態は泥沼化する。肉弾戦を伴う「非対称戦争」での消耗に米国が耐えられるか。中間選挙を控え、油価も上昇する中、トランプ大統領も焦っているのが本音だろう。
―日本の中東政策をどう見るか。
「中東=エネルギー」という図式でしか見ない人たちが、日本人の中であまりにも多い。日本人の中東への理解に対する限界がここにある。
実は2010年、駐日イラン大使だったアラグチ現外相が「核問題について意見交換したい」と私を訪ねてきたことがある。彼は、大量のプルトニウムを持ちつつ核を平和利用する日本を「モデルにしたい」と語っていた。日本は、領土を巡る紛争や石油利権への野心を持つことなく、高い技術力を持った中東にとっての友好国だ。地域の安定のために果たし得る役割も大きい。
―高市政権の対米政策は。
日米首脳会談でトランプ氏が真珠湾攻撃を持ち出した時、高市早苗首相が「あの先制攻撃がきっかけで日本人は苦しんだ。大きな失敗だった」と切り返さなかったのは残念だ。5月に予定される米中首脳会談は、日本の頭越しにウィンウィンの戦略的関係で合意する可能性が高い。日本が主体的に米中両国との関係を再構築する時期に来ている。
―沈静化に向けた方策は。
ペルシャ湾の安全航行は日本の国益だが、開戦側に加担した自衛隊派遣は慎むべきだ。戦後日本の基軸である「非核」「多国間・国連外交」が試されている。停戦と世界の非核化を求める国連総会決議を働き掛ければ、160カ国以上は賛成するだろう。総会に拘束力はないが、国連を機能させ、欧州各国や中国、イランの改革派も巻き込んだ協調を醸成していくことが、日本の唯一の正解ではないか。
〔写真説明〕インタビューに答える日本総合研究所の寺島実郎会長=3月26日、東京都千代田区