東京の山の手と多摩のあいだに、20kmもの距離をほぼ直線で結んでいる道路がありますが、半分はクルマの通れない「自転車歩行者道」です。その先にはいったい何があるのでしょうか。
花見ができるのどかな「直線道」
東京都において、長い直線の道路は珍しいものですが、約20kmにわたってほぼ一直線に続く道路があります。ただ、その道は性質の異なる2つの区間に分かれます。
ひとつは、都道の「井の頭通り」です。渋谷センター街付近を起点に北西へ延びる道路で、甲州街道(国道20号)を越えて杉並区内に入ると、そこからほぼ直線となります。吉祥寺駅前を過ぎ、千川上水に突き当たる関前5丁目交差点(武蔵野市と西東京市の境)が終点です。
もうひとつは、都道253号に指定されている「多摩湖自転車歩行者道」です。井の頭通りの先から続く形で延びていますが、道幅は狭くなり、クルマの通れない歩行者・自転車専用の直線路となっています。
つまり井の頭通りの終点が、多摩湖自転車歩行者道の起点となり、その終点は西武多摩湖線武蔵大和駅西交差点まで続きます。なお、多摩湖自転車歩行者道は全体が「狭山・境緑道」という名の都立公園にもなっています。
多摩湖自転車歩行者道は、小平駅前の一部区間ではクルマも通行可能ですが、基本的には通行できず、住宅街の中の遊歩道といった趣です。花小金井付近から先は、西武新宿線の南側に並行して延びています。
さらに続き、萩山駅前からは西武多摩湖線に沿って進みます。八坂駅を過ぎたところで西武国分寺線の踏切を越え、終点の手前で進路を右に変える西武多摩湖線の築堤をくぐります
この約10kmに及ぶ直線路には、自然豊かな風景が広がっています。沿道には桜並木が続き、3月後半から4月前半にかけては、花見を兼ねたサイクリングや散歩を楽しむ人の姿が多く見られます。
多摩湖自転車歩行者道はサイクリストの間でも人気のルートですが、もしここをクルマが通行できれば、都心と北多摩の主要地域を結ぶアクセス路となっていた可能性もあります。では、なぜこれほどまでに直線的な道が生まれ、かつクルマが通れないのでしょうか。
車が通れぬ理由は終点にあり
「多摩湖自転車歩行者道」が直線である理由は、地下を通る水道管にあります。その地下には、山口貯水池・村山貯水池(多摩湖・狭山湖)から武蔵野市の境浄水場へ水を送るための導水管が通っています。
対して、井の頭通りは境浄水場から世田谷区の和田堀給水所まで、浄水を送る送水管が埋まっています。こちらは境浄水場までの導水管よりも深いところを通っており、クルマも通れるよう補強されて道路になりました。
クルマの通れない多摩湖自転車歩行者道は、周囲と比べて築堤状に高くなっている箇所もあり、導水管の位置が浅いことをうかがわせます。
井の頭通りから続く直線の多摩湖自転車歩行者道が武蔵大和駅西交差点で終わると、そこから先は上り坂となり、「多摩湖通り」の脇に自転車道が続きます。やがて多摩湖通りは、都立狭山公園の入り口となる多摩湖南門から、多摩湖(村山貯水池)の外周道路となります。
多摩湖南門から都公園内に入ると、多摩湖を一望できる場所に出ます。そこで現れるのが、都の歴史的建造物にも指定されている取水塔。多摩湖自転車歩行者道の導水管は、ここに通じています。